行政書士法の改正情報(2025/5/31)

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現在、行政書士法改正が国会で議論されています。
執筆時点(2025/5/31)で総務委員会・衆議院参議院ともに通過しており、このまま成立する見込みです。
施行予定は令和8年1月1日ですが、一足先に概略を取りまとめます。
なお、本記事についてはあくまでも執筆時点のものであり、微調整や変更がある可能性があることを付記しておきます。本記事によって何らかの損害が生じた場合であっても、一切応じかねますのでご了承ください。

改正のポイント

衆議院法制局に改正案がアップロードされており、これを元に見ていきましょう。
まずは行政書士法の一部を改正する法律案要綱を整理します。

令和7年5月29日
行政書士法の一部を改正する法律案が提出されました。
衆議院法制局 最新議員立法情報

  • 一 行政書士の使命
    行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とするものとすること。
    (第1条関係)
  • 二 職責
    1 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないものとすること。
    2 行政書士は、その業務を行うに当たっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならないものとすること。
    (新第1条の2関係)
  • 三 特定行政書士の業務範囲の拡大
    特定行政書士が行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することができる範囲について、行政書士が「作成した」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものから、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものに拡大すること。
    (新第1条の4第1項第2号関係)
  • 四 業務の制限規定の趣旨の明確化
    行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言を加え、その趣旨を明確にすること。
    (第19条第1項関係)
  • 五 両罰規定の整備
    行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限違反及び名称の使用制限違反に対する罰則並びに行政書士法人による義務違反に対する罰則について、両罰規定を整備すること。
    (第23条の3関係)
  • 六 施行期日等
    1 この法律は、令和8年1月1日から施行すること。(改正法附則第1条関係)
    2 その他所要の規定を整備すること。

改正法に対する筆者の所感

【筆者の所感①】
一見すると大した変化ではなさそうに見えるかもしれませんが、業務範囲に大きな変化があります。
現行法において特定行政書士は審査請求代理権限について「前条の規定により行政書士が作成した」という前提が入っており、全ての手続について審査請求権限はありませんでした。これが「前条の規定により行政書士が作成することができる」に変わり、全く状況が異なります。前提となる行政手続につき、前者は行政書士の手続関与が求められていたところ、後者は行政書士の手続関与がない部分にも審査請求権限があることを意味します。
これはそれなりにインパクトのある法改正で、例えば官公署手続について軽微なものは本人自らが手続を行っているわけです。行政書士の職域は行政控除説の関係から極めて広く、例えば住民票の届出、運転免許の手続など日常的な行政手続を含めて多岐に渡ります。前提となる手続関与という要件がなくなりますので、極めて幅広い範囲の審査請求権限という形で、国民社会へとより深く関与することができるようになります。
そのため、行政書士には今迄以上に高い信頼や業務品質が求められます。本改正案に「使命」や「職責」という文面が並んでいるのは、単なる業務拡大ではなく、立法者の意図としてより高い品位と信頼に基づく業務運営を求める意志が込められているように思われます。
なお、「行政書士が作成することができる」というのは行政書士の独占業務のうち、官公署関係手続を主に意味します。当然ながら、例えば司法書士の独占業務にあたる登記申請手続について、本改正により行政書士に審査請求権限が付与されるものではないと思われます。

【筆者の所感②】
次に、罰則関係の強化です。今、現実社会で起きている問題として、官公署提出書類・権利義務関係書類・事実証明関係書類の有償作成という行政書士の独占業務を軽んじたブローカーが跋扈しています。この点、東京都行政書士会の働きかけにより行政書士でない者の排除を目的として、窓口にプラカードを設置するなどの動きがあります。しかしながら、現実問題としてブローカーの跋扈という実態が完全に排除できているわけではありません。
一般国民の方より「なんでそんなブローカーの申請を行政が受理しているんだ?」という真っ当なご質問を受けることがありますが、これは行政書士法の極めて難解な独占業務の範囲というのが起因すると見ています。隣接する法律職である士業を見ても、行政書士の独占業務を正確に把握している方は少ないのではないか、それくらい行政書士法の独占業務は難しいです。まして、法律職ではない全ての行政手続の担当窓口について、正確な把握を求めるというのは更に難しく、その隙間を狙って無資格者による手続を許す事態に繋がっているのではないかと思います。
他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言は従前の取扱いを明文化したもので、実質的な変化はありません。行政書士法弁護士法72条等と同じくして有償業務についての独占業務権限という法律構成です。一方で「両罰規定の整備」は大きな変化と言えます。両罰規定とは例えばA法人の担当者Bが行政書士法違反を行った場合に、担当者BのみならずA法人に対しても処罰が可能となることを意味します。現行法においても両罰規定は存在していますが、この整備により実質的に強化されたと言えるでしょう。
前述の悪徳ブローカー問題について、東京都行政書士会や日本行政書士会連合会は対策を講じておりましたが、この両罰規定整備はその実効力の問題として一歩前進したのではないかと思います。

具体的な改正法について

こちらも衆議院法制局にアップロードされた改正案を見ていきましょう。
行政書士法の一部を改正する法律案新旧対照表について、改正部分が多いため、条文番号の整備など軽微なものについては省略するものとします。なお、掲載文については執筆時点での情報であり、確定情報ではないことを念のため付記しておきます。
以下、新旧対照表の改正案について重要と思われる部分を抜粋します。

(行政書士の使命)
第一条 行政書士はその業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを使命とする。

(職責)
第一条の二 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。
2 行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。


(業務)
第一条の三
 [略]
2 [略]

第一条の四 行政書士は前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 [略]
二 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三・四 [略]
2 [略]

(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
2 [略]

第二十一条の二 第十九条第一項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

第二十二条の四 第十九条の二の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。

第二十三条の二 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条の二十の二第六項において準用する会社法第九百五十五条第一項の規定に違反して、同項に規定する調査記録簿等に同項に規定する電子公告調査に関し法務省令で定めるものを記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をし、又は当該調査記録簿等を保存しなかつたとき。
二 第十三条の二十二第一項の規定による当該職員の検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。

第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二、第二十二条の四、第二十三条第二項又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

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