中小企業庁により小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第20回)、<創業型>(第4回)について公募要領の公開がされています。
直近の2026年4月締切(通常枠第19回/創業型第3回)でも変化はありましたが、通常枠第20回/創業型第4回はそれ以上に大きく相違しています。
執筆時点(2026年6月3日)で公開されている公募要領をもとに注意点などを特定行政書士・認定経営革新等支援機関の有資格者が解説します。
(参考/中小企業庁)「小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第20回)」の公募要領を公開しました
(参考/中小企業庁)「小規模事業者持続化補助金<創業型>(第4回)」の公募要領を公開しました
小規模事業者持続化補助金とは?
補助金/助成金/奨励金/給付金(以下、「補助金等」といいます)は主体によって「国」、「都道府県」、「市区町村」という3つの類型があります。このうち、小規模持続化補助金は「国」が主体となっている補助金等であり、所属自治体を問わないため比較的利用しやすい類型であるといえます。
補助金等はそれぞれ「行政サイドが何か達成したい目的」があって企画されます。
その多くは厳格な審査がなされますから、どのような行政目的か?という視点は重要です。
小規模事業者持続化補助金についてざっくりと言えば「販路開拓の仕組みを考える」というものです。
1.事業の目的
小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(物価高騰、賃上げ、インボイス制度の導入等)等に対応するため、小規模事業者等が取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします。
本補助金事業は、小規模事業者等が自ら策定した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取組(例:新たな市場への参入に向けた売り方の工夫や新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等)や、販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。
(参考)小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領 第7版 p4より引用
執筆時において今回のスケジュールや補助額等については以下のとおりです。
補助率・補助上限額の基本構造については、直近の公募要領と大きく変わりません。
| <一般型 通常枠> | <創業型> | |
| 公募要領公開 | 2026年5月27日(水) | 同左 |
| 申請受付開始 | 2026年11月5日(木) | 同左 |
| 様式4発行の受付締切 | 2026年12月4日(金) | 同左 |
| 申請受付締切 ※必ず最新版の公募要領をご確認ください。 | 2026年12月15日(火)17:00 | 同左 |
| 補助率 | 2/3 (賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4) | 2/3 |
| 補助上限 | 50万円 | 200万円 |
| 補助上限の上乗せ | 【インボイス特例】50万円上乗せ 【賃金引上げ特例】150万円上乗せ | 【インボイス特例】50万円上乗せ |
<一般型 通常枠>の主要な変更点
補助対象事業の要件について
| 第19回 | 第20回 | |
| 要件数 | 3要件 | 4要件 |
追加となった要件は「 (4)事業効果報告時の売上高・売上総利益が補助事業終了時と比較し増加することが見込める事業であること」というものです。
従前の審査において収益性が全く無関係だったとは思いませんが、この点が明確に求められることになりました。客観的データに基づく市場・顧客ニーズ分析、営業方針、数値根拠などの記載が必須といえます。これは基礎審査の失格要件に直結するため、事業計画書の質的水準が厳格化された変更でしょう。
小規模事業者持続化補助金においては「経営計画」および「補助事業計画」の策定が求められますが、経営計画においてしっかりと現状課題を分析し、定性面・定量面の双方から課題解決の方針を定め、その実効策として補助事業計画を企画するという方針がより重要になるでしょう。
その点においては従前も重要視していたので大きな相違ともいえませんが、少なくとも要件として掲げられたので不正受給との兼ね合いも含めて注意すべきです。
賃金引上げ関連について
| 第19回 | 第20回 | |
| 特例要件 | 事業場内最低賃金+50円以上 | 1人あたり給与支給総額を年平均3.0%以上増加 |
| 特例の比較期間 | 申請時と補助事業終了時の時点比較 | 補助事業実施期限日を終点とした連続12か月とその前年同月の12か月の比較 |
| 特例の算定対象者 | 事業場内最低賃金の対象従業員(在籍者) | 両期間全月分の給与支給を受けた従業員(中途採用・退職者は除外) |
| 特例の実績報告時書類 | 直近1か月分の賃金台帳 | 補助事業実施期限日を終点とした連続12か月分の賃金台帳 |
| 賃金引上げ加点要件 | 事業場内最低賃金+30円以上 | 1人あたり給与支給総額を年平均2.0%以上増加 |
最も大きな相違点は、従前「特定者への50円引上げ」だったところ「対象者全員について%での増加」というところでしょう。しっかりと数値計画においてその人件費で無理が生じないか吟味する必要があるといえます。
例えば賃金引上げ特例は+150万円、賃金引上げ加点要件は採択率向上とメリットも大きいですが、安易に考えると窮境原因になる可能性があります。
とはいえ、近年の物価高騰の折、例えば新卒採用が従前四大卒20万円だったところ、近年は四大卒30万を超える上場企業も増えてきているのが実情です。
採用募集が難しいという事業者様の声も多く聞くところですので、これを機に雇用計画などの見直しということであれば良い機会であるといえるかもしれません。
広報費・ウェブサイト関連費について
| 第19回 | 第20回 | |
| ウェブサイト関連費 | 補助金交付申請額の1/4(最大50万円) | 一律30万円(税込) |
| 広報費 | 規定なし(明示なし) | 一律30万円(税込) |
近時の小規模事業者持続化補助金について「チラシのみ」での採択率は厳しい傾向にある、というのが行政書士・認定経営革新等支援機関の専門家グループ内での共通認識だったのですが、これが明文化された形となりました。
特に「広報費」が従前、制限がなかったところ「広報費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください。」との明記がなされています。
「ウェブサイト関連費」については従前と同様に「ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください。」との明記がなされています。
これが意味するところは、「チラシ戦略/ウェブ戦略だけで本当に売上が上がっているのか?」ということでしょう。
そもそも小規模事業者持続化補助金の要件として、売上総利益の増加を求められていますので、しっかりとご自身の事業を見つめなおして、安定的な財務状況を目指す必要があるといえます。
もう少しいえば、それだけ実効性の乏しい申請が横行していたということであり、補助金制度本来の目的である「稼ぐ力の向上」に立ち返った変更といえます。
第三者からのアドバイス関係
第20回では冒頭の注意事項に以下の文言が追加されています。
「商工会・商工会議所を除く第三者からのアドバイスの有無」の項目でその相手方および支援に係る金額(着手金、成功報酬その他名目のいかんを問わず)の記載がない場合には、虚偽の報告として不採択・交付決定取消となります。
(参考)小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領 第7版 p1より引用
この点は、近時の補助金不正受給対策の流れに加え、2026年1月施行の改正行政書士法における「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という規律の明確化とも、方向性を同じくするものと考えられます。
2026年1月の改正行政書士法では19条にて「行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。」とされ、1条の3にて「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類…を作成することを業とする。」とされます。
補助金等にかかる書類は「官公署提出書類」でありますから、文理解釈上、行政書士業務です(社会保険労務士など他士業の独占業務を除く)。
(参考/e-gov)行政書士法
この点につき、中小企業庁からの回答が記載された日行連発第1434号令和6年2月14日においても「(…中略)これまでの家賃支援給付金等と同様に、これらの申請は近年頻発している不適切な申請を抑止する目的から「あくまで本人による申請が前提」であり、他者の名義での申請は認められていませんが、申請者の本人名義での申請を行政書士が有償で代行することは差し支えないことを確認いたしましたので、お知らせいたします。」とされています。
(参考/茨城県行政書士会)事業再構築補助金及び生産性革命推進事業の行政書士による代理申請について
従前より非資格者により補助金等の支援(名目上はコンサルティング料など)が行われていた事例が散見されておりますが、これにより補助金等の不正受給が社会問題となっています。
例えば、雇用調整助成金では約1,100億円、持続化給付金では約25億円が取消総額に至ったとの報告もなされており、不正受給に関して行政は非常に厳格なチェック体制を構築しつつあります。
(参考:厚生労働省)雇用調整助成金(不正受給関係)
(参考:経済産業省)持続化給付金の不正受給者の認定及び公表について
なお、小規模事業者持続化補助金においては今のところ「行政書士に限る」旨の明記は見受けられませんが、事業承継・M&A補助金など一部の補助金においてはその旨が明記されているものも見受けられるため、注意が必要です。
本補助金では、J グランツからの申請のみを受け付ける。入力情報については、必ず、申請者自身がその内容を理解し、確認の上、申請すること。同一パソコンから大量に申請がある場合等は、個別に事情を伺う可能性がある。正当な事由なく、申請者自身による申請と認められない場合には、当該申請は不採択又は交付決定の取り消しとなる。なお、行政書士(又は行政書士法人)でない者が、申請者に変わって有償で申請の作成をおこなうことは、行政書士法違反に該当する可能性があるほか、交付決定後に行政書士(又は行政書士法人)以外が申請の作成を行ったことが判明した場合、交付決定の取消となる可能性がある。
(参考)中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠 15次公募 p23より引用
補助金等の申請支援問題は、単なる行政書士の職域争いではありません。
官公署に提出する書類を、誰が、どの責任で、どの法的規律の下で作成するのかという、申請者保護と公金支出の適正化に関わる問題ですので、今後も行政サイドとしては厳格な対応を行っていくものと見込まれます。
行政書士には守秘義務等の責任・懲戒等の処罰という法的規律が課されていますが、非行政書士にはこの自浄作用がありません。
不正受給の被害は行政だけでなく、知らずに巻き込まれて返還・罰則が課される事業者自身にも及びます。
<創業型>の主要な変更点
創業型の変更点は健康経営優良法人加点の追加など細かい相違はあるものの、概ね<一般型 通常枠>と同様です。
今回の変更ではありませんが、期間要件が第2回より変更となっている点はご注意ください。
| 第2回 | 第3回 | 第4回 | |
| 期間要件 | 創業後3年以内 | 創業後1年以内 | 創業後1年以内 |
一般に創業期は3~5年を示すことが多く、例えば東京都創業助成事業などは「5年内の経営経験の有無」が問われます。ひとえに「創業支援策」といっても各制度ごとに要件の捉え方が異なるため、各種公募要領の確認が必要です。
この「創業後1年」は、他の必須要件となる特定創業支援証明の取得期間が最低1ヵ月であることを踏まえると非常にシビアな状況となってしまっている点には注意が必要です。
当事務所でも創業支援(許認可・補助金・創業融資等)を行っておりますが、現状、ご相談のタイミングによっては小規模事業者持続化補助金の創業枠での申請は難しい場合が散見してしまっています。
この点について、現場支援の観点より従前の3年要件への回帰が望ましいと考えますが、今後の行政の制度設計判断にかかっています。
なお、変更点ではありませんが、特に下記について頻繁に質問を受けますのでご確認ください。
【要件】
※4:法人の場合は現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書の「会社成立の年月日」、個人事業主の場合は開業届の「開業・廃業等日」が公募締切時から起算して過去1か年の間であることが要件となります。書類の発行日や提出日ではありませんので、ご注意ください。
※5:個人事業の法人化をした場合は、個人事業の開業日から1年を経過している場合は申請できません。
※6:過去すでに小規模事業者持続化補助金<創業型>において採択され事業を実施した事業者は、個人事業主、法人に関わらず、本補助金の申請対象外です。また、代表が複数いる法人が、「創業型」で採択され事業を実施していた場合、代表者を変えたとしても、本補助金の申請対象外です。
【必要な手続】
○以下の書類を提出してください。
✓ 産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を受けたことの証明書(※)の写し。ただし、認定市区町村が発行したものに限る。
※当該証明書の内容等の詳細については、当該認定市区町村等に直接お問い合わせください。証明書の有効期限が切れている場合も、要件に適合していれば提出書類として認められます。
<法人の場合>
✓ 現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書(原本)。申請書の提出日から3か月以内の日付のものに限ります。
<個人事業主の場合>
✓ 開業届の写し。
(参考)小規模事業者持続化補助金 <創業型> 第4回公募 公募要領 第8版p7より引用
まとめ
今回の変更にかかる主要な相違点を解説しましたが、いかがだったでしょうか。
いつもお客様にはお伝えしているところですが、「補助金はお小遣いではなく、事業の投資だという認識がより重要になるのではないか」というのが私の所感です。
この点は、政府・中小企業庁が進める「稼ぐ力」や「賃上げと投資の好循環」を重視する政策方向とも整合します。
中小企業庁長官のインタビュー記事によれば、下記のような方針とのことです。
「このチャンスを生かして成長型経済に変えないと、日本は衰退していきかねません。成長軌道に乗せるためには、日本経済を支える中小企業や小規模事業者が生産性を上げて『稼ぐ力』を高め、賃上げ原資を獲得することで『賃上げと投資の好循環』を生み出すことが重要です」
(参考:東洋経済オンライン)小規模事業者の稼ぐ力を高める新支援制度とは? 「デフレマインド」の脱却が成長のカギを握る
補助金等を活用して「稼ぐ力」を高めてもらう、これが中小企業庁の狙いであるといえます。
なお、申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認いただきますようお願い申し上げます。
(参考/中小企業庁)「小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第20回)」の公募要領を公開しました
(参考/中小企業庁)「小規模事業者持続化補助金<創業型>(第4回)」の公募要領を公開しました

