業務委託契約って請負?委任?準委任?

身近な法律

先日相談会の待ち時間にて、税理士の先生との雑談で出た話を面白かったので記事にしてみます。
テーマは「業務委託契約書に収入印紙がいるのか?」という話ですが、私たちの専門である民法という観点から考え方をまとめさせて頂きました。

なお、印紙税は税理士の先生の職務範囲ですから、具体的個別的なご相談は弊社でお受けできません。
本件はあくまで一般的抽象的な解説である点、ご理解頂ければと思います。

収入印紙とは何か?

私も合格者ではありますが、宅建士の国家試験にも登場する論点ですね。
「一定の書類(契約書)には収入印紙を貼れ」というルールになっており、これを課税文書と言います。そして、契約書であっても「貼れ」と定められていないものを不課税文書と言います。

(課税物件)
第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
(納税義務者)
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

印紙税法(e-gov)

課税文書の典型例は売買契約書請負契約書でしょうか。
しかしながら、全ての契約書が課税文書というわけではなく、印紙税法に払えと書いていない委任契約書準委任契約書などは原則として不課税文書という類型となります。

売買・請負について、特にマイホームを購入した場合など実務的には100%契約書を作成しますから、その契約書には必ず収入印紙を貼らなければならない、というのが国のルールというわけです。
売買・請負は次のようにイメージするとわかりやすいかもしれません。
どちらも「新築の家を買う」と一般に表現する話ですが、法律用語としては若干の違いがあります。

売買と請負のイメージ

売買契約(民555)
新築建売住宅のイメージ。
元々、新築の家が建っていてそれを買うためにお金を払うというケース。

請負契約(民632)
新築注文住宅のイメージ。
建物を自分の好み通りに新築を建ててもらってお金を払うというケース。

一方で、課税文書であっても除外されているものもあり、これを非課税文書と言います。

(非課税文書)
第五条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。
一 別表第一の非課税物件の欄に掲げる文書
二 国、地方公共団体又は別表第二に掲げる者が作成した文書
三 別表第三の上欄に掲げる文書で、同表の下欄に掲げる者が作成したもの

印紙税法(e-gov)

少々ややこしいので概念図を作ると次のような分類になります。

課税文書とは?

はて、それでは業務委託契約書は?という事が議論の出発点です。
結論を端的に申し上げると、業務委託契約書の内容が請負契約書であれば課税文書(印紙税法 別表第一 課税物件表 2号(e-gov))ですし、委任契約書や準委任契約書であれば原則は不課税文書(払えと書いていない)という違いが生じてきます。
委任契約(準委任契約)が請負契約と取り扱いが違うという根拠は次のとおりです。

なお、同法第648条の2《成果等に対する報酬》に規定する委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約する契約は「請負」には該当しないことに留意する。(平18課消3-36、令2課消4-16改正)

第2号文書(国税庁ホームページ)

契約書の中身で決まる

「契約の中身を見る」という理解が最も大事で、本記事で最も伝えたい話となります。
業務委託契約という契約書は世に溢れていますが、実は民法に書いてある契約ではありません。
民法に書いてある契約を典型契約と言いますが、民法に書いていない契約(非典型契約)も当然ながら私たちは契約を行う事ができます。

(契約の締結及び内容の自由)
第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

民法(e-gov)

もっとも契約が自由だとは言っても「殺人請負契約」なんてものは当然できません。
常識的にも当たり前ですが「強盗請負契約」や「愛人契約」なんてものも無理で、裁判になった場合にそんなもの無効だと跳ねられる典型例です。
前述の民521は「法令に特別の定めがある場合はできない」と言っており、殺人契約なんてものは公序良俗違反(法令の特別の定め)も良いところです。

(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

民法(e-gov)

つまり、民法に書いていない契約類型であっても余程の事情がなければ有効だってわけです。
世の中、案外民法に書いていない契約類型も多く、業務委託契約なんてものはその筆頭でしょう。

作成した契約書に収入印紙を貼るべきか否か、これには契約の内容を考える必要があります。

課税文書に該当するかどうかの判断は、文書に記載されている内容に基づいて判断します。また、文書の内容判断は、その文書の名称、呼称や形式的な記載文言によるのではなく、その文書に記載されている文言などの実質的な意味を汲み取って行います。

No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断(国税庁ホームページ

これは言い換えると、民法を理解する必要があるとも言える話になります。
書類のタイトルではなく、契約書の中身が何なのかを判断する必要があるという点が重要です。
極論を言ってしまえば「準委任契約書」というタイトルを用いていたとしても、後々「それ中身を読んだら請負契約じゃん」と突っ込まれてしまう余地があるという話なので注意が必要です。

結局のところ契約内容を考える必要があり、作成した内容が請負契約に近い話なのか、委任契約や準委任契約に近い話であるのか実質的な部分を見定める必要があります。

試験的には文言や準用関係の違いを押さえれば良いのである意味簡単なんですけどね。
しかし、実務的には特約でいくらでも話が変わってきてしまう部分があり一概に言えない話になります。
試験だと必ず「特約はないものとする」と一文どっかに書かれているはずで、条文どおりに考えるというのがある意味でルールです。
しかし、特約が必ずあるのが実務の世界であるとも言えます。

請負契約・委任契約・準委任契約とは何か?

それぞれの類型の違いを簡単に知る必要があるのでまずは民法を見てみましょう。
この論点に限りませんが定義条文とは非常に重要で、きっちりと理解する必要があります。

(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

民法(e-gov)

試験的な話をすれば委任契約での自己執行義務(民644の2-1)のような規定の有無、無報酬原則かどうか、など様々な違いがあるのですがどれもこれも特約で話が変わってしまう部分です。

例えば、弊社も含めて士業は「委任契約」を締結する場合が多々ありますが無償なわけないですよね。
民法上、実はこれ委任は原則無償だとされているんです。
ところが報酬を頂いて私たちは生計を立てているので、無償だと暮らしていけません。
そこで、特約として報酬規程を入れされて頂いて委任業務を行って生計が成り立つというわけです。
勿論、報酬特約は違法でもなんでもなく、弊社以外の委任契約でも当たり前に記載されます。
そういう意味で、実務的に特約というものは当たり前に使われています。

なお、報酬という観点から考えてみると、H29改正後の現行法下において委任(準委任)についても報酬の面で請負契約と同様に成果完成型履行割合型という仕組みが明記されています。
委任における成果完成型報酬とは、例えば、弁護士との契約で勝訴判決時における報酬、仲介業などの契約成立時における報酬などが典型例としては挙げることができます。
一方でH29改正にかかる履行割合型報酬事務処理に対する対価関係として報酬を定めた場合のような話であり、履行割合型報酬だから即、委任・準委任ではないとも言えません(請負について民634、委任について民648-3、準委任について民656)。
「ここまで事務をやったから、その割合部分だけ報酬を貰うね」という契約は、請負・委任・準委任いずれも有効であるという事です。
噛み砕いて表現すれば、成果完成型とは「商品を納品した、サービスを全て提供した」のような話、履行割合型とは「業務を行った実働時間、業務の進捗状況」のような話、とイメージすると良いかもしれませんね。

いずれにせよ結論を言えば、請負・委任・準委任を区別するには前述の定義条文や趣旨を考えながら「中身を見て判断する必要がある」という事になります。

国税庁の見解を調べておく

今、テーマとなっているのは「この契約書に収入印紙を貼るべきか?」ですから、まずは国税庁の見解に従うことが賢明であると言えます。

そこで1つのポイントとなるのは契約の要素を考えてみる、という点になります。
請負契約であれば「仕事の完成を約する」、委任契約であれば「法律行為をすることの委託」、準委任契約であれば「法律行為でない事務の委託」という前述の定義条文が特に重要です。
注目すべきは請負契約の「仕事の完成」という部分で、請負と委任・準委任の相違点として特に大事なところです。

法律行為とは?

当事者の意思表示によって、特別な法律効果が生じる行為を法律行為と言います。
法律行為の典型例は「契約」です。「私の代わりに売買契約をしてきてね」という話なら、これは委任契約であると言えるでしょう。
一方で、準委任契約は「それ以外の事務」と言っており、非常に広いです。例えば準法律行為や事実行為にかかる事務(法律行為ではない仕事)などを委任契約に即した内容で行えば準委任契約となります。準委任契約の定義条文で出てくる「準用する」とは「委任の考え方を丸ごと使う」と置き換えると良いでしょう。

例えば前述の請負契約での典型例で出した注文住宅であればその家屋の建築完成を約束しています。
しっかりと仕事を完成させる事が必要になるようなサービス、と考えるとわかりやすいかもしれません。建物の屋根がついてないのに渡そうとしてきたら「いや、まだ未完成だろ」と納得できる話ではありませんよね。もちろんそんなものは債務不履行として争う事が可能でしょう。
一方で、委任契約の典型例を考えてみると、弁護士の契約で裁判に「常に必ず100%勝て」というのは不可能であると思いませんか。勝負事ですから、万が一負けてしまう場合だってあるわけです。何か酷い事情がない限り、普通は裁判に負けた事だけで債務不履行とはなかなか争うことは難しいでしょう。

そのあたりが請負と委任・準委任の相違点を理解するうえで大事な部分かと思います。
請負には仕事完成義務がアリ・自己執行義務はナシ(下請けは自由)ですが、その反対に委任・準委任では注意義務規定はあるものの仕事完成義務まではナシ・自己執行義務がアリ(復委任は自由ではない)などの論点に派生する考え方です。
なお、委任(準委任)では労務提供それ自体に意味があると考えます。そのため仕事完成義務があるとまでは考えないのが通説的な理解です。同じ「労務提供」である雇用契約との区別は委任(準委任)では依頼者からの個別具体的な指示系統によって仕事を受けるわけではなく、あくまでも委任(準委任)は独立して事務処理を行うという点がポイントとなります。

ここで国税庁の見解に目を通してみましょう。

 請負とは、当事者の一方がある仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することをいいます。
 ここでいう仕事とは、労務の供給によって発生させる結果であり、それは家屋の建築、道路の建設、車両、機械等の製作又は修理、塗装、印刷などの有形的な結果に限らず、講演、演奏、建物の清掃、機械の保守などの無形的な結果も含みます。

「請負」に関する契約であることの要件(国税庁ホームページ)

こちらの国税庁の見解も参考になります。

請負に関する契約書
(注) 請負には、職業野球の選手、映画(演劇)の俳優(監督・演出家・プロデューサー)、プロボクサー、プロレスラー、音楽家、舞踊家、テレビジョン放送の演技者(演出家、プロデューサー)が、その者としての役務の提供を約することを内容とする契約を含みます。
(例) 工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など

印紙税額一覧表 令和5年4月現在(国税庁ホームページ)

何らかの仕事の完成を確約しており、明確な成果物があれば、請負契約に近い類型というのが国税庁の見解となります。競技者の例が出ていますが、「絶対に試合に出場してくださいね」という役務でしょうから、請負契約の類型というわけです。
よくありそうな例を考えてみると、例えば、「ホームページ作成」「プログラミングの納品」「イラストの作成」「清掃サービスの提供」などは仕事の完成を約束した契約と言えるので請負契約の類型となりそうです。

なお、委任・準委任なら「常に収入印紙を貼らなくて良い」という関係ではありません。

継続的取引の基本となる契約書
(注) 契約期間が3か月以内で、かつ、更新の定めのないものは除きます。
(例) 売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書など

印紙税額一覧表 令和5年4月現在(国税庁ホームページ)

印紙税額一覧表の第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書」とは、特定の相手方との間において継続的に生じる取引の基本となる契約書のうち次の文書をいい、税額は1通につき4,000円です。

ただし、その契約書に記載された契約期間が3か月以内であり、かつ、更新の定めのないものは除かれます。

(1) 売買取引基本契約書や貨物運送基本契約書、下請基本契約書などのように、営業者間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱いまたは請負に関する複数取引を継続的に行うため、その取引に共通する基本的な取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法または再販売価格のうち1以上の事項を定める契約書

(2) 代理店契約書などのように、両当事者(営業者には限りません。)間において、売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理もしくは媒介の業務または株式の発行もしくは名義書換の事務を継続して委託するため、その委託する業務または事務の範囲または対価の支払方法を定める契約書

(3) その他、金融、証券・商品取引、保険に関する基本契約のうち、一定のもの

(例) 銀行取引約定書、信用取引口座約定約諾書、保険特約書など

No.7104 継続的取引の基本となる契約書(国税庁ホームページ)

この話が先ほど「委任契約書や準委任契約書であれば原則は不課税文書」という表現をしてしまったところなのでご注意下さい。
継続的な委任契約(準委任契約)という話であれば、7号文書として課税対象になります。
なお、ここでいう継続性の判断については下記の引用部分をご参照下さい。

 課税物件表において、第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書」とは、「特約店契約書、代理店契約書、銀行取引約定書その他の契約書で、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもののうち、政令で定めるものをいう」と定義されており、また、「契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が3月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く」との除外規定があります。
 つまり、特約店契約書など文書の表題に関係なく、契約当事者間において何回も同じような取引が反復継続する場合において、取引に共通して適用される令第26条に定める取引条件をあらかじめ定めておく契約書のことをいい、その契約書に記載された具体的な契約期間が3か月以内で、かつ、更新に関する定めのないものは、第7号文書から除かれるということです。
 したがって、個々の取引についてその都度作成される個別契約書とは区別されますので、例えば、物品の加工請負契約の目的物の総数量及び総金額が確定している場合に、「その納期は5か月後とする。」、「納品は各月100個ずつ6か月間行う。」、あるいは「代金の支払いは、6か月に分割して支払う。」のように取り決めた場合には、契約期間については3か月を超えているものといえますが、1取引における納期又は支払いを分割したにすぎませんので、個別契約ということになり、第7号文書には該当しないことになります。

継続的取引の基本となる契約書とは(国税庁ホームページ)

その他、国税庁ホームページでは各種契約書について様々な解説がされています。
悩んだ場合にはまずはそちらを参照してみると良いでしょう。
また、国税庁の相談窓口もありますから、自分の見解が正しいか確認する場合には便利です。

まとめ

  • 書類のタイトルだけで判断せず、民法を考えながら中身で決める
  • しっかり国税庁の見解を調べる
  • 判断が難しいなら詳しい税理士の先生に相談する
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