先日12/29にX(Twitter)のスペースにて行政書士の仕事だとか行政書士試験について語らせて頂きました。
そこで話題になった一般知識(文章理解)の攻略について補足をしたいと思います。
せっかくなので合格戦略についての話から。
なお、執筆時令和5年12月31日時点での話という事は念頭においてください。
試験制度は年々変化しており、令和6年度も変更が確定しております。
行政書士試験センターや各種予備校から最新情報は取得するようにしてください。
合格のために戦略を練る
本題に入る前にまずは行政書士試験の概略について復習です。
せっかくなので私が取っていた戦略の話をしてみたいと思います。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
孫子の兵法という有名な兵法書の一説になりますが、これは「試験」においても応用がききます。
年に1回という国家試験においては当然ながら「合格する人」と「合格できない人」が存在してしまうわけで、その意味で「戦争」なわけです。
戦争と表現したからには当然ながら「敵」が存在するわけです。
それではここで言う「敵」とは一体誰を指すべきでしょうか。
この点について、私は「受験する年度の本試験問題」が攻略すべき敵であると思います。
受験予備校の同じクラスの受講生でもなく、はたまた本試験会場の周囲の受験生でもなく、当たり前の話ですが攻略すべきは「試験当日に解くであろう本試験問題」なのです。
1年に1回の国家試験を目指している人はおよそ1年をかけて試験の準備を行うわけですが、しっかりと「戦略」を立てておりますでしょうか。
ちなみに「戦略」と「戦術」は別概念です。
「戦術」というのは戦略の下位概念で、ある目標を効果的に遂行するための個別具体的な作戦です。例えば、行政書士試験で言えば「行政法の勉強方法はどうすれば良いですか?」という話です。
一方で「戦略」とは戦術の上位概念で、もっと大きな基本方針であるとか大局観のある作戦を指します。まずは私のとった行政書士試験における戦略を伝授しましょう。
試験範囲は明確ですか?
冒頭で紹介した孫子の一説「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の「彼」とは具体的に「試験範囲」であることに異論はないと思います。
試験における受験勉強とは即ち「試験範囲を明確にすること」に他なりません。
行政書士試験の試験範囲?そんなの当り前じゃないか、法学、憲法、行政法、民法・・・そういった次元の話ではありませんよ。例えば民法総則ではどんな分野があって、どんな論点がどこまで細かく出題なされるのか。この出題予測を細かく立てていく事なのです。
もっと言えば受験勉強においては「費やした時間が得点に繋がる必要がある」のです。
今まさに勉強している事が受験年度の本試験に果たして本当に出題されるのか?これを精査する能力が行政書士試験においてはとても重要だし、試験の性質としてとても難しい特徴があるんです。
ところで行政書士試験とは基本的に180点と絶対的な合格点が定められた試験です。
これって逆に言えば300点満点のうち120点も失点して構わないんです。全ての設問、もっと言えば全ての肢の正誤を100%判定できる人間が合格しているわけではないんです。
テキスト、条文、判例、そして過去問というのは出題予測の観点からして極めて重要な学習素材ではあります。しかしながら、その全ての暗記をする必要などないのです。
例えば、行政書士試験においては「多肢択一式」という形式で毎年3問出題されるのがお約束ではありますが、そこでは判例を題材とした極めて細かい空欄補充が出題される事があります。
今年は不合格だった、多肢択一式の出来がボロボロであったから来年度はしっかり判決理由を丸暗記して試験に臨もう・・・これはおそらく不可能だし、それを実行した受験生は他が疎かになってしまう可能性がとても高いのではないかと思います。
何でも良いのですが例えば憲法の有名判例で「国歌斉唱拒否事件」というものがあります。裁判所のホームページを実際に見て欲しいのですが、実に35ページに渡る判決理由が掲載されています(実際には半分は補足意見ですが)。
イメージ作りのため簡単に言いますと、受験生としてこの判例で押さえておくべきは前述のホームページにおける「判示事項」と「裁判要旨」に相当する部分です。こういう大事なところを掻い摘んで行政書士試験の対策テキストというのは作成されているかと思いますが、そのテキストに掲載されている以上に細かい出題がなされることが頻繁にあるのが行政書士試験なんです。
その細かい出題に備えて全ての判例の判決理由を完全に暗記することがナンセンスだし不可能と言った趣旨は伝わりましたでしょうか。
行政書士試験は費用対効果が試される試験である、まずはこれを頭に叩き込んでください。
知らないこと撲滅運動、これを始めると受験期間は長期間になってしまうのではないかなと思います。
必要な知識だけを確実な知識として得点して合格点を出す、これを目指しましょう。
試験範囲を確定せよ
行政書士試験に限らず法律関係の国家資格においてスタンダードな「元ネタ」というものがあります。
当り前の話ですが条文、最高裁判所の判例(前述の判示事項等)です。
ところが行政書士試験で非常に厄介なのがこれに学説・通説だとか判例の判決理由といった「学問的」な話が度々出題される傾向があります。一般知識にまで目を向ければ政治経済などを筆頭に自由自在な出題がなされてしまうと言って良いでしょう。これらある意味「試験委員の好み」にお付き合いしなければならないという側面が出て来てしまっています。
そこで、受験時代だった当時、私は「お付き合いしなくて良い知識は多数存在しているのではないか?それらを無視して合格点に到達は可能なのではないか?」という観点から20年くらいの過去問を徹底的に分析していました。
ここで特に意識していたのは下記のような観点になります。
- どういう分野が頻出なのか?(頻出分野の把握)
- どんな深さまで学習する必要があるか?(掘り下げる深さの確認)
- 関連知識はどの程度必要か?(頻出知識に近い分野の特定)
- 限られた時間で何に着手するべきか?(費用対効果を常々考える)
そうした観点から「正答限界」なるものを測定しました。
事前に準備するべき合格に必要な知識の量は限られているのではないか?お付き合いしなくて良い知識はその場で考えればよいのでないか。そうして全体から後者を除いた知識(=お付き合いするべき知識)がこの正答限界というわけです。
例えば、R2における正答限界は以下のような内訳メモが残っていたので掲載してみましょう。
| 分野 | 出題数 | 正答限界 |
| 法学 | 2 | 1 |
| 憲法 | 5 | 3 |
| 行政法 | 19 | 18 |
| 民法 | 9 | 8 |
| 商法会社法 | 5 | 4 |
| 憲法多肢 | 4 | 4 |
| 行政法多肢 | 8 | 8 |
| 一般知識(その他) | 8 | 3 |
| 一般知識(情報) | 3 | 3 |
| 一般知識(文章理解) | 4 | 3 |
| 合計 | 240点 | 196点 |
受験当時の私が「対策をすれば得点できる費用対効果が比較的高いもの」と感じた点数(=正答限界)が択一式においては196点もあった、という事になります。逆に言えば「お付き合いするべきではない(対策は費用対効果が悪い)」と感じたものが44点も存在したとも言えます。
再三になりますが、その年度の全ての知識、過去問の全ての知識、テキストの全ての知識、模試の全ての知識を網羅的に有している人が合格するわけではありません。
努力した時間の全てを得点に置き換える事ができる人が合格するというのが試験です。
そして行政書士試験というのはその傾向が非常に高いと言えます。
合格点の内訳を確認しよう
ご存じの方も多いと思いますが復習がてら見てみましょう。
行政書士試験センターによるR5の内訳と合格基準は次のように示されています。
| 試験科目 | 出題形式 | 出題数 | 満点 | |
| 法令等 | 択一式 | 5肢 | 40問 | 160点 |
| 多肢 | 3問 | 24点 | ||
| 記述式 | 3問 | 60点 | ||
| 小計 | 46問 | 244点 | ||
| 一般知識等 | 択一式 | 5肢 | 14問 | 56点 |
| 合計 | 60問 | 300点 |
合格基準
(1)合格基準
次の要件のいずれも満たした者を合格とします。
① 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以上である者
② 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者
③ 試験全体の得点が、満点の60パーセント以上である者
(注) 合格基準については、試験問題の難易度を評価し、補正的措置を加えることがあります。
さて、ここで注目すべきは合格基準の(1)②になります。56点満点の40%は22.4となり、1問4点ですから一般知識等の分野で最低でも6問を正答する必要がある計算となります。
合格基準の(1)①についてはクリアしなければそもそも合格基準点の180点に届かないのであまり気にする必要はありません。仮に一般知識等が56点の満点であったとしても、法令等が半分の122点では合計178点となってしまいますので、合格はそもそもできない仕組みです。
この合格基準点と前述した「正答限界」を踏まえて当時算出したのが「失点計画」となります。
考え方としては「対策した分野は100%確実に絶対に取らなければならない。しかし、ケアレスミスを含めて間違えて良い目安はどの程度か?」というものになります。
その配分がそっくりそのまま努力配分の目安としていました。
私の失点計画
漠然と「180を取るんだ」という方も大勢いらっしゃると思います。それはそれで良いと思います、合格までの登頂ルートは合格者の数だけ存在しますし、その全てが「正解」だったわけですから。
ただ、受験した当時、自分自身の合格を真摯に考え抜いた結果、どの分野をどの程度にまで練り込む必要があるのか?を測定していたのです。果たして私はこの勉強方針で良いのか?判決理由を読み込んで暗記が必要なのか?ニュース検定をどの程度やり込む必要があるのか?等々。
そして、その先の「合格に必要な知識は限られているのではないか?」の仮説のもと、どの程度の失点が可能なのか?という検証になります。実際立てた私の失点計画は次のようなものになります。
| 科目名 | 問題数 |
| ①一般知識 | 6/14(問) |
・対策は範囲を絞る。対策した分野は必ず取る。
・情報法令、文章理解は必ず絶対に取る。
※一般知識の範囲はR6以降変わります(後述)
| 科目名 | 問題数 |
| ②法学 | 2/2(問) |
・全問正解を狙いたい。
・ただR4-1のように厳しい出題も散見。
| 科目名 | 問題数 |
| ③憲法 | 2/5(問) |
・条文のほか、基本テキスト掲載程度に留めるべきではないか?
・多肢もあり得点配分は大きいが、些末な判決理由を追いかけずとも合格できるのではないか?
| 科目名 | 問題数 |
| ④行政法 | 17/19(問) |
・行政書士試験の得点配分が行政法は112/300もある。
・たまに厳しい出題があるので2問くらいのミスは許されるのでは?
| 科目名 | 問題数 |
| ⑤民法 | 7/9(問) |
・行政書士試験の得点配分が民法は76点もある。
・たまに厳しい出題があるので2問くらいのミスは許されるのでは?
| 科目名 | 問題数 |
| ⑥商法会社法 | 4/5(問) |
・捨てろとたまに見るがそれは本当か?こんなにも簡単じゃないか。
・1問ミスくらいは許される。
| 科目名 | 問題数 |
| ⑦多肢憲法 | 2/4 |
| ⑧多肢行政法 | 4/8 |
・判決理由の空欄補充はお付き合いする必要がないのでは?
・そのかわり、行政法の条文問題は何が何でも取る。
以上のような方針をまとめてみると、次のような計画となりました。
ここで面白いのが、記述の点数が20点程度で良いという事です。
なお、憲法については私は特に自信のある科目でした。苦手だったから低い配分にしたわけではなく、その理由は得点効率が特に悪いと感じたというのが理由になります。
| 合格基準点 | 180/300(点) |
| 択一目標(失点計画) | 164/240(点) |
| 記述の目標点 | 30%相当の20点で合格できる。 |
| 科目名 | 得点数 |
| ⑨記述行政法 | 10/20 |
| ⑩記述民法 | 10/40 |
・全ての記述の過去問を見ると特に民法は基本ばかり。
・特別な対策は不要で普段の択一学習だけで良いのではないか?
当時の私の戦略が多少は伝わりましたでしょうか。
行政書士試験の合格のために必要な知識が限られているという意味も伝わりましたでしょうか。
しっかりと、得点するべき設問を確実に追いかけて合格できる知識を確実に習得する、そうすれば合格は可能なはずなのです。
ここで勘違いして欲しくないのは「確実に」の意味です。ここが曖昧なままでは一生かかっても合格はできないと思います。
目指すべきは文字通りパッと聞かれてパッと即答できるというレベルです。
「リンゴは野菜ですか?」と聞かれて「いいえ、果物です」と即答できますよね?
そのレベルに知識を持っていかなければならないという事です。
例えばですが、「推定」なのか「みなす」なのか迷っているようではダメです。「停止条件」なのか「解除条件」なのか迷っているようでも話にならないと思います。
ちなみに復習がてらイメージを解説しておきましょう。
推定・みなす
どちらも「そのように取り扱う」という意味では同じです。
しかし、後の裁判によって「覆る余地があるのかどうか」が決定的に違います。
例えば「A商店において、リンゴは野菜とみなす。」という条文があった場合、A商店にあるんだったらリンゴは常に野菜と考えるという事です。その後に裁判になって反証をあげる余地すらありません。
ところが「A商店において、リンゴは野菜と推定する。」という場合、その後の裁判になって反証をあげる余地があります。もしかするとリンゴを果物として取り扱ってくれるかもしれません。
停止条件と解除条件
これは単語の意味として理解すると良いです。その条件が成就したときに停止させる条件、と解除する条件。
停止条件は「条件が成就するまで効力を停止させる」とするもので、条件成就によって電気のランプが付くようなものです。”許可を条件とする停止条件付売買契約”とあれば売買契約は署名捺印して交わしたんだけれども許可が出るまで売買の効力を発生させない、許可が出たら効力が発生するって事です。
これに対して解除条件は「条件が成就したら効力を解除させる」というもので、条件成就によって電気のランプが消えるようなものです。”許可を条件とする解除条件付賃貸借契約”とあれば賃貸借契約は交わしてもう実際に住んでいるんだけれども許可が出たら賃貸借契約をやめるので出て行ってくださいねって事です。
この項の最後になりますが、次のことを常々自分に問いかけながら学習をしてください。
今やっている勉強は本試験の得点に繋がるものでなければならない。
一般知識分野を攻略せよ
前述のとおり、行政書士試験の一般知識という分野には基準点が存在します。
どれだけ法令分野で満点を取ろうとも、一般知識の基準点である6問を突破しなければ不合格になってしまいます。
この点、受験仲間が択一190点を超える点数を出しながら一般知識で5問しか取れずに不合格になった、という実例を目の当たりにしました。
しっかりと対策する事は行政書士受験生にとってはクリアせねばならない関門です。
しかしながら、前述のとおり「お付き合いするべきではない分野」が山のように出ているのが現行法下における一般知識です。
このうち「文章理解の攻略」をできるだけ早くから着手する事をお勧めします。
この点において、一般知識の試験範囲がR6より変更となる事が確定しております。
執筆時R5.12.31時点においてまだ正確な発表がなされておりませんが、行政書士試験センターによれば次のような告示が掲載されております。
「行政書士試験の施行に関する定め」の一部改正について【令和6年度試験から適用】
第二 試験科目
[一 略]
二 行政書士の業務に関し必要な基礎知識(一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護及び文章理解の中からそれぞれ出題することとし、法令については、試験を実施する日の属する年度の四月一日現在施行されている法令に関して出題するものとする。)
第三 試験の方法
[一 略]
二 試験問題については、行政書士の業務に関し必要な法令等から四十六題、行政書士の業務に関し必要な基礎知識から十四題を出題する。
三 出題の形式については、行政書士の業務に関し必要な法令等は択一式及び記述式とし、行政書士の業務に関し必要な基礎知識は択一式とする。
まず、R5以前の一般知識分野の出題数が変わらないという事、従前出題されていた分野についても基本的には変わらない事が言えます。
従前、一般知識において出題されていた法令は「個人情報保護法等」しかなかったわけですが、ここに「行政書士法等」が加わるという理解でよろしいかと思います。
特に政治経済等の対策が難しい分野よりもこの一般知識で出題される法令は比較的対策がしやすいので非常に大事です。しかもその範囲が増えるという事でこれは受験生にとって吉報だと思います。
R5以前から私はこのうち「文章理解」の対策が大事と考えていました。R5以前は毎年3問の出題があって、R6以降の出題数はまだわかりませんが、それでも対策しておいて損のない分野です。一般知識の中においては圧倒的に費用対効果が高い分野であると言えるのです。
大学入試における現代文に苦手意識のある方などは一般知識がコンスタントに取れるイメージなどないかもしれませんが、これはコツを掴めば確実に満点を取る事ができる分野です。
しかも、一度習得してしまったら「下手になりにくい」という特徴があります。例えるなら自転車の乗り方に近い話で、一旦乗れるようになったらなかなか乗れなくはなりませんよね。即ち、直前期の知識詰め込みの大詰めの段階になって文章理解の対策は手抜きをすることが可能になるんです。
しかも一般知識の基準点突破の基礎になるという心理的な余裕が生じます。これだけ対策して自信あるんだから文章理解は満点だ、と。R6において文章理解の出題数は不明瞭ですが、私は従前の3問から変わらないんじゃないのかなって思っています。万が一減ったとしても1問という事はないでしょう。
以上の理由から、一般知識対策としては次のような事が言えると思います。
一般知識対策の攻略方法
①なるべく早い時期から文章理解はやっていい。そして満点を目指す。
②一般知識のうち法令分野(個人情報保護法・行政書士法等)は費用対効果が高い。
③その他政治経済等の分野の学習をしても良いが、やるのであれば分野を絞って「必ず取る」状態にしておくこと。
④明確に試験全体の優先順位をつけること。政治経済等に着手するのであれば行政法や民法は文字通り「完璧である状態」にしておかなければならない。
文章理解を攻略せよ
R6試験を見なければわかりませんが、従前どおり3問という出題だという想定で話をします。
そうであるならば、文章理解によって一般知識の合格基準点が3/6と半分であれば良いという事を意味します。出題形式が安定しており、出題難易度も安定しており、こんなおいしい分野は一般知識ではほかに存在しません。
ここで私の行った文章理解の勉強方法をご紹介しましょう。
文章理解の勉強方法
①文章理解の過去問を10年ほど1周する
→苦手であれば、後述する公務員試験用テキストに掲載の解法解説などを見ても良いかも。
→「なんとなく」では答えを出さないこと。指示語や接続詞、キーワードに着目しながら明確なロジックを組み立てる訓練を意識すること。
→解説は気になったら読む程度で構わない。自分のロジックが正しいかの訓練でしかないのであんまり解説を読み込んでも力はつかない。文章理解は「習うより慣れろ」の側面が強い。
②終わったら公務員試験用の過去問を1周する
→行政書士試験の文章理解と形式が極めて近いため。難易度は本試験よりも公務員試験の方が内容面で抽象的な議論が多いためやや難しい。
→参考までに私が使用したのは「公務員試験 本気で合格!過去問解きまくり! 【3】文章理解(TAC 出版)」。ただし、問題数が多ければどのテキストでも構わない。
③それらが終わったら適度に問題を覚えない程度で周回する
→時間を計測してタイムアタックをすると楽しい。
→一気にやるのではなく1日3問とか制限をかけて集中すること。文章理解も大事だが、行政法や民法は大丈夫ですか?
④本試験が近付いたら必ず過去問に戻ること
→行政書士試験と公務員試験では形式的には近いが内容的に相違するため。
文章理解の解法テクニック
詳細は専門の受験対策本に譲りますが、簡単に文章理解の解法テクニックを列挙しましょうか。
問題を解く上で私はおおよそ次のような点に注目していました。
解法テクニック
①指示語に細かく注意を払う
②接続詞の意味をしっかり把握して注意を払う
③空欄補充は前後にヒントがある場合が多い
→空欄の前だけを見て飛びつかないこと
④なんとなくでは絶対に選ばないこと
→ロジックを組み立てる訓練。なんとなくでやるなら別の事をした方がマシ。
→その結論に至った根拠を必ず本文に求める習慣をつける。
⑤自信がつくまで毎日やること
→文章理解の得点感覚を絶対に鈍らせないぞ、という意識でしばらくは訓練。
→毎日やるかわりに1日1問とかでもOK。
⑥早目に対策するかわりに超直前期は法令重視に切り替えること
→法令学習の方が当然大事です。行政法、民法は大丈夫ですか?
読解力を上げるメリット
文章理解の対策は必要不可欠だと私は思っていますが、実は一般知識攻略以外においても恩恵を多々感じていたところです。
過去問を分析していくと見えてきますが、実は行政書士試験って「文章形式」の形で出題される場合もすごく多いんです。
多肢択一がその筆頭ですが、5肢択一の分野でも「文章形式」での設問が多々あるんです。
法令分野ですから勿論「知識」として解ければよいです。ですが、それで解けるとも限りませんよね。知らないものは知らない、さってサイコロ投げるか・・・ちょっと待ってください。
実は、「文章理解の応用」として解ける事もあるんです。
この点について実例を解説します。
まずは過去問を準備して「解いてから」私の解説を読んでください。
- 令和4年問55(一般知識・情報・空欄補充型)
- 令和4年問1(法学・空欄補充型)
令和4年問55(一般知識・情報・空欄補充型)
確かに情報分野は費用対効果の良い分野ではありますが、当然ながらこんな問題に対する準備などしているわけもありません。サイコロ投げようか?いやいやちょっと待ってください。
この手の問題こそ「文章理解」で解けないかという視点で見てみるのです。
まず、皆さんはどのようにアプローチしましたか?
「①~⑤まで空欄があるから、語群から 1 個 1 個選んでいく」そんな声が聞こえそうです。
私は「問 55 が掲載されている p46 の全てを活用する」でした。
要するに、
・設問冒頭の説明文
・①~⑤の空欄のある本文
・ア~コの記載がある語群
・1~5 の選択肢
これら全ての情報をヒントにして正答を出すパズルみたいなものです。
まず設問冒頭から全部見渡します。
しかし特にヒントになりそうな情報は見当たりません(たまに重大なヒントになるような部分があります)。仕方がないので本文を読み始めます。
「人工知能(AI)」知らんがな。なんの試験やねん。
そうじゃありません。ヒントを駆使して読解力で解けないか考えましょう。
まず最初の空欄①と②が「並列」であることに着目。何やら「AI が利用されていること」についての具体例の列挙のようです。
●AI の利用についての具体例
・①や②
・翻訳や文章生成
・ゲームのプレイ
・各種の予測作業
こんなもの限定列挙なわけがないので、例示列挙であることは確実。「ゲームのプレイ」とか具体的な話が多いので、何か「具体的な AI 利用と言えるもの」はないか(こういう製品で活用されてるよとか。iPhone の Siri ちゃんを想像したのを覚えています)。
そして語群に目を落とす、特にそういった「具体的な例」に該当しそうなものは存在しない。ということは①や②は「抽象的な例」が入るのだな、しかもそれはセットになるようなもの。
➡【ヒント 1】①と②のとっかかり。
・①や②は抽象的な例(AI 利用)
・①と②は並列でセットになりそうなもの
ただ、仮にここでどれかわかったとしても、どうせ①と②どちらにそのセットが入るのかわかるわけがない(①と②が並列だからヒントがゼロ)ので、このまま読み進めます。するとどちらに入るのか指定がありました、1 段落目の最後です。
●①の例は文字起こしサービスである。
これを見たときに「画像の読み込み」が浮かびました。ワードで書いた文章をプリントアウトして、それを OCR で読みとって「画像データ」でなく「文字データ」として保存する技術がありますよね。語群を見る、あるじゃん「ウ 画像認識」。
この後が重要です。選択肢を見ます(これも重大なヒント)。
1~5 の肢で①の空欄に対応するものは「アかイ」だと言っている。
➡【ヒント 2】選択肢は入るものを限定している。
①=ア or イ
②=ウ or エ
どうやら①は「画像の読み込み」の話ではないようです。はて、「文字起こしサービス」と言えばなんだろう?「ハイ、Siri!」のあれか?➡「ア 音声認識」では?あとテレビでも自動的に字幕を出せるような仕組みあるよね、あれもじゃないか?
【ヒント 2】を見ると「ア or イ」と言っているので、その理解が正しいかの検討をします。語群イは「声紋鑑定」と言っています。これ「文字起こしサービス」ですか?どちらかと言えば刑事訴訟での証拠関係だとか(本当にそいつの電話だったのかとか)そういう話じゃないです?
「ア or イ」の妥当性判断をした結果、「ア」だとここで断定しました。選択肢に目を落とします、肢 1~3 に確定。4 と 5 は絶対にないので削除、以後検討対象から外します。
さて、1 段落の最後の検討に戻りましょう。
●②の例は生体認証である。
【ヒント 2】を見るとウ or エから選べと言ってます。確かに「エ DNA 鑑定」もワンチャンあるなと思いました、生体認証で真っ先に出そうな具体例。しかしここで【ヒント 1】に戻ります。
●①と②は並列でセットになりそうなもの
これ、「音声認識」と「DNA 鑑定」ってセットと言えますか?私は思えませんでした、「音声認識」「画像認識」のセットと断定。それこそ目の虹彩を認識してロック解除をするとか映画でもよくあるじゃないですか。選択肢に目を落とすと肢 3 も消えます。残りは肢 1or2。ついでに③の指示も見ておくと「③はオ or カ」だと言っています。
2 段落ではどうやら話題を切り替えているようです。
まず「AI の発展の背景として~」と言っているので、1 段落目では「こんなに AI は利用されて発展しているんだよ」と言って、2 段落目ではその理由付けとして述べようとしているのが読み取れます。そして「第一に」とあるので、その理由が複数あるのでしょう。形式的に文章の先を探して丸で囲ってみると「第一に」「第二に」「第三に」とあるので理由付けは 3 つあると言っています。
●AI が発展した理由
・第一理由:予測のために利用する③が収集できるようになった
・第二理由:高速処理のために CPU が開発された
・第三理由:新しいテクノロジーである④が出てきた。
まず③から見てみましょう。本文を見ても全くピンとこなかったので「③はオ or カ(肢1・2)」と言っているので見てみます。
・オ ビッグデータ
・カ デバイス
いやこれは「カ デバイス」なわけがないでしょ。デバイスを収集するってどういう意味ですか?PC や iPhone の端末を回収する?廃棄物処理業の話とかでは絶対にないですよね。
ビッグデータってのはたくさんのデータってことです(情報分野で入れた知識はここくらい)。
例えば、Google が「検索ワード」を全てデータ化して収集したら「利用者はどういうワードに興味があるのか?」を把握できますよね。その IP アドレスには興味がある広告をがっつり表示させることが可能になります。他にも YouTube が「視聴データを収集」して、そのユーザーがどんな動画に興味があるのかを把握して、興味ありそうなものを関連動画として表示させる、だとか。
典型例としては、様々な顧客から情報を集めて「天気の悪い日はこういう商品が売り上げ良いからどんどん入荷させよう」みたいな使い方かな。
さて、空欄③を見ると「③が収集できるようになった」とあります。以前はビッグデータは技術的な問題があってできなかったけど、今はそれが技術的にできるようになって活用されている、と。全然おかしくないじゃないですか、「カ デバイス」ではないでしょ。PCや iPhone の端末回収してデータ解析して世の中の役に立って便利になったね、それむしろ個人情報やばいし。絶対に違うよね。
選択肢に目を落とすと肢 1or 肢 2 なので肢 2 が消えて、解答は肢 1。自分の論理展開に自信があったので以下は余字記載。次の設問へ GO。
➡正答:1
令和4年問1(法学・空欄補充型)
せっかくなのでもう1問くらい見てみましょう。この問題についても現場の「読解力」で正答を出した設問だと言えるでしょう。先ほどと同様に、まずはご自身で回答してから問題を読み進めてください。
本文の冒頭に「ヨーロッパ大陸」とあるので「成文法とか不文法」の論点という事がわかります。なんで?って方は法学の準備不足です。問 1 と 2 が法学分野ってのは H12 以来の伝統芸です。「法学」「ヨーロッパ大陸」ときたら浮かぶ論点はそれでしょう。
こういった推理が可能なのも肢別ではなく通年分の過去問研究をしているからです。
もちろん今後形式が変わる可能性はありますが、基本的に問 1~2 は法令の法学分野が出ているだろうと推測しながら問題を読むという事が可能です。
ちなみに行政法の出題は執筆時においては 3 問(総論)→3 問(行手)→3 問(行服)→3 問(行訴)→2 問(国賠)→3 問(地自)→2 問(総合)という流れが多いです。H27 あたりで出題形式が変わりますが、おそらく特定行政書士制度が創設されたからだと思います。要するに審査請求を業務として可能にできるようにしたから審査請求の出題を増やしたのでしょう(それ以前は 2 問でした)。以降、今のところ形式面では安定しています。
というわけで、今どの問題解いているかの把握って案外大事です。
ところで、この論点につき私の手持ち武器は以下の知識のみでした。
いずれも行政書士試験の一般的なテキストに記載されている内容程度のものです。
法学の成文法として持ち込んでいた知識
・成文法主義
→法律として明文化している制度設計
ex)日本、大陸系
・不文法主義
→判例法理を中心とする制度設計
ex)イギリス、アメリカ
当然、こんな知識だけでこの設問は対応できるわけがありません。
そこで「読解力」を駆使して推理を行う事となりました。まず冒頭から検討していきましょう。
「ヨーロッパ大陸において、伝統的に<ア>という制度に対して消極的な態度」
消極的な態度ってのは要するに「その制度はいやだ」ってことです。つまり、<ア>という制度は大陸系諸国が採用している制度ではない、という事です。
続けて、「<ア>制度に消極的ってことで大陸系諸国の裁判に対する考え方がわかる」と言っています。そして「裁判官の意見が区々に分れていることを外部に明らかにすべきではない」、その理由は「裁判所の権威を害するからだ」と続きます。
裁判官の意見が「区々に分かれていない」のであればそれはみんなの考えが同じってことでしょう。「分かれている」のだから、ある判決を出す場合に多数決となってしまって少数派と判断が異なってしまったってことです。要するに「少数派が出てしまった場合など隠してしまえ」ってことです。
ここで前提知識がピンときました。
ある判決が出た場合の少数意見とは、日本で言う「補足意見」ではないか?
様々な判例に目を通すと「補足意見」が付されている場合が散見されます。例えば多数派は「原告の勝ち!」としてしまった場合の少数派です。判決の結論としては「原告勝ち」なのですが、「いやいやちょっと待ってよ、こういう観点も大事だから今後の判断基準の参考として意見だけ言わせてよ」という少数派裁判官の意見を言います。補足意見として真っ先に出て来ないといけないのは憲法の判例です。
補足意見で有名な判例
cf)寺西判事補事件(最判 H10.12.1)
→裁判官の政治運動についての重要判例。
→補足意見で裁判官と政治運動についての判断が示された。
cf)吉祥寺駅ビラ配布事件(最判 S59.12.18)
→補足意見でパブリックフォーラム論が示された。
そして選択肢の語群を踏まえるとここで出たヒントと対応は以下です。
【ヒント 1】空欄に入るヒントを見抜く。
<ア>について考えてみると次のようなヒント。
・大陸系諸国が採用している制度ではない。
・「少数意見制度」or「合議制度」
・裁判官の補足意見などは隠すべきなんだ。
➡ヒントの3つ目からどう考えても「少数意見制度」しかあり得ない。
➡選択肢 2・4 が消えて、検討対象から外す。選択肢 1or3or5 に絞られる。
続けて<ア>の説明がなされますが「うん、間違ってないな」の確認程度で良いでしょう。
どうやらこの文章は判決を出す場合に「裁判官の補足意見(=少数意見)」を判決文に掲載するべきか?という議論のようです。
ちなみに前述のとおり日本は補足意見が掲載されます。同じ成文法の大陸系諸国で取り扱いがどうやら違うようです(当然そんな知識なんてあるわけがない)。
次の空欄の検討です。
「裁判官の意見が分かれて反対者の少数意見が生じるような場合であってもそんなもの裁判所の威信に関わるから掲載すべきではない、その理由は・・・」というテーマを念頭に置きながら読みます。
「裁判所で意見が対立しても、<イ>として力をもつ<ウ>のみが一枚岩のように示されることが、裁判所の信頼を生む」という理由だそうです。だから補足意見を載せないのだ、と。実はここの選択肢は迷いました。
まず<イ>が「判決理由」だと意味が通らないってのはわかりますが、<ウ>は「主文」でも「多数意見」でも意味が通りそうだと感じたからです。
流石に「判決理由が何かの力を持つ」ってことはあり得ません。既判力の効力が及ぶのは「主文」だけです(民訴 114-1)。
(既判力の範囲)
民事訴訟法(e-gov)
第百十四条 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
ちなみに主文と判決理由は次のようなイメージ。
事件:原告が被告に 100 万円を貸した。期日になっても被告が返さないので原告が訴えた。
原告の請求:「被告は原告に金 100 万円を支払え。」
→上記を訴状に書いて裁判所に提出。そして以下のように結論が出されます。
補足意見のイメージ
【主文】 被告は原告に金 100 万円を支払え。
(※以上、既判力の生じる部分。判決の効力が確定すると原則争うことができない。)
【判決理由】 被告は原告から金 100 万円を借りており弁済義務が生じている。弁済
期日に返さなかったので原告には民法 587 の 2 に基づく返還請求権が生じている。
よって、民法 587 の 2 により、主文のとおり判決する。
(※以上、請求認容判決を出した理由の記載。)
この判決は、裁判官山田太郎の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるも
のである。
裁判官山田太郎の補足意見は、次のとおりである。
一 被告の本件各所為について、・・・
二 憲法 21-1 の保障する表現の自由は、・・・
三 本件においては、・・・というほかはない。
(※以上、判決に対して意見を言いたくなったケース。)
ちなみに、空欄部分を再度見てみましょう。
<イ>として力をもつ<ウ>のみが一枚岩のように示されることが、裁判所の信頼を生む。
【ヒント 2】確定できない場合は保留。他の肢で出ないかを検討してみる。
1 肢:<イ 判決理由>➡意味が通らないので削除。
3 肢:<イ 判例>、<ウ 多数意見>
5 肢:<イ 判例>、<ウ 主文>
ただ、シンパシーがあると感じたのは 3 肢です。これまでの話の流れでテーマは「補足意見の掲載をすべきか?」ってところでしたから。補足意見の掲載があるのは判決理由の末尾でしょ、主文なわけがありません。ここでウが主文だとするのなら、突然既判力の問題にテーマが変わることになりますが、テーマが変わるようなシグナル(接続詞)は見当たりません。国家試験の問題文に掲載されるような文章を書く筆者なのですからそんなミスをするでしょうか。とはいえ、確信は持てないと判断したのですから、とりあえず保留です。<イ>と<ウ>が確定しなければ<エ>を検討してはいけないなんてルールはありません。
次の空欄の検討です。
「しかし、果たして外観上常に<エ>の裁判の形をとり、異なる意見の表明を抑えることが、裁判所の威信を高めることになるであろうか。」
これが筆者の最も言いたかった事です。日本のように「補足意見を掲載すべきだ」と言いたかったのでしょう。「異なる意見の表明を抑える」とはまさに補足意見を判例に掲載しないよって意味です。その判決に反対をしたが多数決で負けてしまった少数意見を外部に明らかにすることで、それは裁判官の権限を保障することに繋がるし、その方が司法の威信が増すのだ(だから補足意見は掲載しろよ)、と後段に繋がります。
さて<エ>で示されている語群は「全員一致」と「多数決」です。「外観上」というのは外からみた「見かけ」という意味です。判決は裁判官の多数決で決まりますが、その反対者である少数意見なんて存在しないように扱うのであれば、見かけ上「反対者がいない」ってことを意味します。つまり、<エ>は「全員一致」です。
今、検討していたのは 3 肢 or5 肢だったのですが、1 肢も含めて<エ 全員一致>を採れる選択肢は 3 肢のみでした。結局のところ<ア>と<エ>で答えが出る設問ですね。
➡正答:3 肢
接続詞の考え方(1)
本記事の最後におまけです。
接続詞「しかし」の用途について考えてみましょうか。
当たり前ですが「しかし」という接続詞は「逆説」を意味します。論理がそこで方向性が変わります。類型としては「しかし」「けれども」「だが」「しかしながら」等です。あたりまえですね、知らない人などいないでしょう。
典型的な使い方としては、論理の方向性を変えるものですがそれだけではないのです。
ここが文章理解も含めて大事になってくる概念になります。
典型的な用途例は次のようなものでしょう。
「今日は肌寒い。しかし、天気は良い。」
気温が低いのであれば通常、天気は悪そうなもの。晴れているけど気温が上がらなかったのですね、そりゃ天気良くて寒い日もあるでしょう。
単に論旨をひっくり返している程度なもので、この程度であればそこまで重要な意味は持ちません。
これならどうでしょう。
「今日も肌寒い。しかし、朝から散歩に出かけた。最近は曇り空が続いて憂鬱な雪ばかりだったが、今日はいつもと違っていた。澄み渡るような晴天だったのだ。」
気温の話から突然「散歩」にテーマをすげ替えています。筆者が最も言いたかったのは気温ではなくて「晴天だからウキウキ気分になっちゃった」ってことなのです。ついでに言えば「しかし」をきっかけにして様々な論理展開がなされていくって事なのです。
もうおわかりですね、逆説の接続詞には次のような重大な用途があります。
【ヒント 3】逆説の接続詞は、筆者のテーマを示す場合がある。
本問の問1については「反語」として「しかし」を使っているのでよりテーマを示すことがわかり易いのではないかと思います。
「しかし、見かけ上つねに全員一致の形式を取っていることが、威信を高めることになるだろうか?(いや、ならない。)」
➡このカッコ書きの含みを「反語」と言います。
接続詞には多少類型がありますが、まずは「逆説の接続詞」に注目する習慣をつけましょう。文章理解にせよ法令にせよ国家試験に掲載されているような文章ですから、わざわざそれを出題した試験委員を信頼して良いと思います。
もちろん駄文を載せてしまう試験委員の存在も可能性がないわけではないです。
まぁ、そこは所詮人間の仕事ですからそういう可能性があることも念頭には置くべきかとは思います。
接続詞の考え方(2)
ついでにもう1つの重要な使い方を紹介しましょう。
【ヒント 4】譲歩を見たら逆説の接続詞を予測せよ。
例えばこういう文章です。
「たしかに、これまでの日本社会では妻が夫の家庭に入るという風潮が存在していた。しかし、現代社会においては女性の人格権は尊重されるべきだという考え方に変化してきている。」
本スジの主張はもちろん後段の「女性も尊重されている」という話です。その後の論理展開としては、きっと女性の人権を尊重する現代社会がいかに素晴らしいかを筆者が力説するに違いありません(しかし=その後に筆者のテーマが来る)。
その本スジの主張に繋げる前段階のテクニックとして「一歩譲る」というものがあります。
ですから、「たしかに」だとか「これまでの日本社会では(過去の話)」だとか「譲歩」を示すシグナルを見た場合に「どうせ論理ひっくり変えるんでしょ、変わるぞ変わるぞ」と読むテクニックが使えるのです。
そして「しかし」という逆説の接続詞が来るので筆者のテーマがそこに存在するという理屈になります。
「譲歩」を見たらその後にテーマが来る可能性がある、これも頭の片隅に入れましょう。
ついでに言うと、本問の問1もこの手法を実は使っていると言えます。
「たしかに、大陸系では補足意見は付されない。しかし、補足意見は大事だから日本では付される。」
何故、法学だとか憲法だとかで「海外の話」や「大日本帝国憲法」の話が突然出てくるのか。これは「正当性の契機」と言いますが、いかに現行法が素晴らしいかを論理付けるテクニックなのです。こんなにも旧法は悪かった、それとは違うのだから新法はこれほど素晴らしいのだ。
現行憲法を持ち上げる際によく見るロジックです。
本問についても全く同様ですね。
海外と違う制度を採用している日本の制度はこんなにも素晴らしいのだ、です。
つまり、「補足意見を重視しない大陸系」とはどこかで論旨が裏返る事が最初の「ヨーロッパ大陸」という文言から予測しながら読み進めることが可能だったというわけです。
どうでしょうか、これは果たして知識問題なのでしょうか。
文章理解のテクニックが上達すると、法令の点数も伸びるという関係にあるのは間違いないと思います。


