75歳以上の高齢者ドライバーは免許更新時に認知機能検査を受検する必要があります。
先日の記事でお話したように、この検査でしっかり点数を出さないと最終的には運転免許の取消等がなされる場合もあります。地方に在住の方だと車を運転できなくなるのは日用品の買い物が不便になるなど非常に大きな問題だと思います。
ですので、しっかり準備をしてさくっと良い点数を出しましょう。
検査なんて面倒だなって思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし「国が定期的に認知機能を高める訓練をさせてくれる」と考えれば悪いことばかりではないでしょう。
脳の認知機能は高ければ高い方が良いに決まっています。
普段の生活の中で意識して訓練することは少ないと思いますので、せっかくの機会だと思って、ポジティブに捉えましょう。
先日の記事の復習となりますが、認知機能検査が必要になる場合は75歳以上の方だけで、主に2つあります。
- 運転免許の更新のタイミング
- 一定の違反行為をしたタイミング
まずは免許の更新のタイミングから見ていきましょう。
運転免許の有効期間っていつまで?
免許の有効期間は道路交通法に規定があります。
警視庁のHPに詳細な掲載があるので気になる方はこちらをご覧ください。
ただ、非常に細かいので「何年おきに運転免許の更新があるのか」を把握すれば良いと思います。
70歳未満 5年に1回
70歳 4年に1回
71歳以上 3年に1回
※一定の違反運転者は3年に1回
ところで認知機能検査は75歳以上の運転者を対象としていましたよね。
ですから75歳以上の方は3年に1回の免許更新のタイミングで認知機能検査が行われることになります。
なお、一定の違反行為があった方は認知機能検査のほか運転技能検査がある点についても注意してくださいね。
認知機能検査の2つの分野
認知機能検査の内容は大きく2つの分野があります。
- 手がかり再生
- 時間の見当識
それぞれ具体的に何をやるのか簡単に見てみましょう。
手がかり再生
受検者の記憶力を検査するものです。イラストを見て記憶をした後、検査とは全く無関係な課題を行って、そのあとイラストをヒントなしに回答します。その後、ヒントありで回答します。
当然、ヒントなしで回答した方が得点が高いです。
- ヒントなし・・・1つ2点
- ヒントあり・・・1つ1点
時間の見当識
受検者の時間感覚を検査するものです。
検査時における年月日、曜日、時間を回答します。
後ほど具体的に見ますが、試験開始直前に「何時何分から始まったのか」を確認しておく必要があります。
もちろん、年月日・曜日についてもちゃんと確認しておいてください。
私なども普段「何日」なのか深く考えずに過ごしてしまっているので、突然「今日は何年何月何日?」とか「今は何時何分?」とか聞かれると困ってしまいます。
同じような方はきっと多いんじゃないかと思います。
具体的な検査の再現
警察庁HPが試験を再現できるよう資料掲載してくれています。
せっかくですので実際の試験風に再現してみます。
試験委員の口頭説明や配布資料なども併せて掲載するので、もしよかったらお手元に筆記用具と紙を準備して練習してみてください。
また、検査には時間制限があるので時計やストップウォッチを準備して練習すると良いと思います。
※検査時に時計やストップウォッチ、スマートフォンなどは使えません。
それでは以下、前述の警察庁HPの資料引用を元に検査内容を再現してみます。
検査に当たっての事前の指示

これから、検査を始めます。
私の声が聞こえますでしょうか。聞こえた方は、手を挙げて教えてください。
検査に当たって、まず、携帯電話をお持ちの方は、検査中に鳴らないようマナーモードにするか、電源を切って、カバンの中やポケットなどにしまってください。時計をしている方も、カバンの中やポケットなどにしまってください。字の読み書きに眼鏡が必要な方は、出しておいてください。

それでは検査中の諸注意を行います。
問題用紙などは、指示があるまでめくらないでください。回答中は、声を出さないようにしてください。質問があったら、手を挙げてください。 回答中に書き損じがあったときは、二重線でこのように訂正してください。

検査結果等に関する説明

よろしいですか。御質問はありませんか。
それでは、本日の検査について御説明します。
この検査は安全な運転に必要な記憶力、判断力を確認するために行うものです。検査の結果、「認知症のおそれがある」とされても、直ちに免許が取り消されることはありませんが、警察から連絡があり、お医者さんの診断を別に受けていただくことになります。
検査は、(※実施機関による)分ほどで終わります。
検査の結果は、検査が終わったら皆さんにお伝えします。また、警察に検査の結果を連絡します。それ以外には、検査の結果を連絡することはありません。検査用紙はお手元にありますか。

表紙の記載

それでは、検査用紙への記入をしていただきます。
最初は、「名前」です。ご自分のお名前を記入してください。ふりがなはいりません。間違えたときは、二重線で訂正して書き直してください。消しゴムは使えません。これからの検査で間違えた場合も、同じように書き直してください。
次は「生年月日」です。ご自分の生年月日を記入してください。書けた方は、鉛筆を置いてください。

これから検査を始めます。
各検査のはじめに、私から、検査について御説明します。
説明の後、皆さんに分からない点があるかどうか伺います。なければ、検査を始めますが、私が指示するまで、用紙をめくらないようにお願いします。
答を書いているときは、声を出さないでください。回答中、御質問があれば、静かに手を挙げてください。御質問はありませんか。
手がかり再生の実施

最初の検査を行います。
用紙は、指示があるまでめくらないでください。
これから、いくつかの絵を御覧いただきます。一度に4つの絵です。それが何度か続きます。
後で、何の絵があったかを、全て、答えていただきますので、よく覚えるようにしてください。絵を覚えるためのヒントもお出しします。ヒントを手がかりに、覚えるようにしてください。
絵が見にくい場合は、手を挙げて、お知らせください。
御質問はありませんか。


これは、大砲です。これは、オルガンです。
これは、耳です。これは、ラジオです。
この中に、楽器があります。それは何ですか?オルガンですね。
この中に、電気製品があります。それは何ですか?ラジオですね。
この中に、戦いの武器があります。それは何ですか?大砲ですね。
この中に、体の一部があります。それは何ですか?耳ですね。
次のページにうつります。


これは、テントウムシです。これは、ライオンです。
これは、タケノコです。これは、フライパンです。
この中に、動物がいます。それは何ですか?ライオンですね。
この中に、野菜があります。それは何ですか?タケノコですね。
この中に、昆虫がいます。それは何ですか?テントウムシですね。
この中に、台所用品があります。それは何ですか?フライパンですね。
次のページにうつります。


これは、ものさしです。これは、オートバイです。
これは、ブドウです。これは、スカートです。
この中に、果物があります。それは何ですか?ブドウですね。
この中に、文房具があります。それは何ですか?ものさしですね。
この中に、乗り物があります。それは何ですか?オートバイですね。
この中に、衣類があります。それは何ですか?スカートですね。
次のページにうつります。


これは、にわとりです。これは、バラです。
これは、ペンチです。これは、ベッドです。
この中に、大工道具があります。それは何ですか?ペンチですね。
この中に、花があります。それは何ですか?バラですね。
この中に、家具があります。それは何ですか?ベッドですね。
この中に、鳥がいます。それは何ですか?にわとりですね。

いかがでしたか。
後で、何の絵があったのかをお答えいただきますので、よく覚えておいてください。
介入課題
※検査に関係がなく採点されない課題です。絵を記憶した直後に別の課題をさせて、注意をそらしてから記憶を確認することで認知機能を見ているのだと思います。

それでは、別の課題を行います。
用紙をめくってください。「問題用紙1」です。


これから、たくさん数字が書かれた表が出ます。私が指示をした数字に、斜線を引いていただきます。例えば、
「1と4」に斜線を引いてください
と言ったときは、表の中から「1と4」の数字を見つけて、一番上の行の左から順番に、見つけただけ斜線を引いてください。
御質問はありませんか。
それでは、問題用紙をめくってください。数字がたくさんある「回答用紙1」です。行は、なるべくとばさないように、お気をつけください。

それでは、「○と○」に斜線を引いていただきます。 鉛筆を持って、始めてください。
※ここで3と6と言われたら3・6に斜線を引きます。
※時間は30秒です。


やめてください。鉛筆を置いてください。
次は、「○と○と○」に斜線を引いていただきます。鉛筆を持って、同じ用紙の、左上の矢印のところから、始めてください。
※先ほど言われたものと別の数字が言われます。ここで2と5と8と言われたら2・5・8に斜線を引きます。
※時間は30秒です。

やめてください。鉛筆を置いてください。
それでは、用紙をめくってください。「問題用紙2」です。


少し前に、何枚かの絵を御覧いただきました。何が描かれていたのかをよく思い出して、できるだけ、全部書いてください。
回答の順番は問いません。思い出した順で結構です。
「漢字」でも「カタカナ」でも「ひらがな」でも構いません。間違えた場合は、二重線で訂正してください。
御質問はありませんか。
それでは、用紙をめくってください。「回答用紙2」です。
鉛筆を持って、始めてください。
※時間は3分です。


やめてください。鉛筆を置いてください。
それでは、用紙をめくってください。「問題用紙3」です。


今度は、回答用紙にヒントが書かれています。それを手がかりに、もう一度、何が描かれていたのかをよく思い出して、できるだけ全部書いてください。
それぞれのヒントに対して、回答は一つだけです。二つ以上は書かないでください。
「漢字」でも「カタカナ」でも「ひらがな」でも構いません。間違えた場合は、二重線で訂正してください。御質問はありませんか。それでは、用紙をめくってください。
「回答用紙3」です。鉛筆を持って、始めてください。
※時間は3分です。

時間の見当識の実施

やめてください。鉛筆を置いてください。
最後の検査を始めます。
用紙をめくってください。「問題用紙4」です。


この検査には、5つの質問があります。
左側に質問が書かれています。それぞれの質問に対する答を右側の回答欄に記入してください。
よく分からない場合でも、できるだけ何らかの答を記入してください。空欄とならないようにしてください。
※空欄の場合は誤答と評価されて総合点に影響するので必ず何か書いた方が良いです。

質問の中に「何年(なんねん)」の質問があります。
これは「なにどし」ではありません。干支で回答しないようにしてください。「何年(なんねん)」の回答は、西暦で書いても、和暦で書いても構いません。和暦とは、元号を用いた言い方のことです。
御質問はありませんか。
用紙をめくってください。「回答用紙4」です。
鉛筆を持って、始めてください。
※時間は2分です。
※このとき時計など手元にないので正確な時間はわかりません。だいたいの感覚で構わないのでちゃんと書くようにしましょう。検査が始まる前に開始時刻が何時何分なのか確認しておくと良いでしょう。もちろん西暦(和暦)と日付・曜日についての検査前の確認も忘れずに。


やめてください。鉛筆を置いてください。
これで検査は終了です。検査用紙の回収を行います。
これから検査の採点を行い、採点結果を個別にお伝えします。
ここで検査の回答が採点されます。
採点基準についても警察庁HPに記載がありますので紹介します。
- 手がかり再生(最大32点)
- 自由回答及び手がかり回答の両方とも正答の場合は2点
- 自由回答のみ正答の場合は2点
- 手がかり回答のみ正答の場合は1点
➡要するに、ヒントなしが2点。もし間違えたとしてもヒントありで回答できたら1点です。
- 時間の見当識(最大15点)
- 「年」正答の場合は5点
- 「月」正答の場合は4点
- 「日」正答の場合は3点
- 「曜日」正答の場合は2点
- 「時間」正答の場合は1点
➡検査開始前に「西暦(和暦)」「月」「日」「曜日」「試験開始時刻」を必ず確認してください。
➡時間については誤差30分未満なら正答です。
進行要領に示す「時間の見当識の実施」において、「鉛筆を持って、始めて下さい。」と言った時刻を「検査時刻」とし、当該「検査時刻」から前後それぞれ30分以上ずれる場合は誤答とする。また、「午前」及び「午後」の記載の有無は問わない。
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninti/saiten_r03.html

検査結果が書かれている書面を個別にお渡しします。
書面には、お名前、採点結果、採点結果に応じた助言が書かれています。
総合点によって、
認知症のおそれがない
認知症のおそれがある
と判定がされています。
総合点の分け方について警察庁HPでは次のように採点基準を定めています。
(1) 総合点の算出
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninti/saiten_r03.html
総合点は、手がかり再生及び時間の見当識の2つの検査の点を、次の計算式に代入して算出します。
(計算式)
総合点 = 2.499×A+1.336×B
A 手がかり再生の点
B 時間の見当識の点
(2) 総合点と結果の判定
総合点によって、認知症のおそれがある者又は認知症のおそれがない者に判定します。
ア 認知症のおそれがある者
総合点が36点未満
イ 認知症のおそれがない者
総合点が36点以上
上記の計算式でそれぞれ満点がいくつなのかを出すと、
- 手がかり再生
➡2.499×32=79.968 - 時間の見当識
➡1.336×15=20.04 - 総合点
➡79.968+20.04=100.008
このことから次の事が言えると思います。
満点を目指す検査ではない。100点中たった36点で良い。
万が一、36点にいかなくても再度検査を受けることができるので心配ない。
「時間の見当識」は配点低いけどハードルが低いのでちゃんと対策する。
「手がかり再生」は配点が高いし難しそうだけど「時間」があってれば大丈夫。
➡「時間の見当識」が合ってれば16問のうち4問くらい合ってれば通過できます。

この検査は、記憶力や判断力の状況を簡易な検査によって確認するものです。
検査の結果、「認知症のおそれがある」とされた方であっても直ちに認知症であるというわけではありませんし、直ちに免許が取り消されることもありません。ですから、免許証の更新をすることはできます。
ただし、警察から連絡があり、お医者さんの診断を受けていただくことになります。
その結果、お医者さんから認知症であると診断された場合は、公安委員会の判断で、免許が取り消され、又は停止されます。
御自身でも、お医者さんや御家族に御相談されることをお勧めします。書面の裏面には、採点方法や総合点による判定について記載しています。後でご覧ください。
また、運転免許証の更新手続をする際には、この結果通知書を必ず持参してください。 なお、この検査は、再び受けることができます。
再び検査を受けたい方や、検査結果について不明な点がある方は、後で質問されるか、警察の運転免許の担当係に御相談ください。
認知機能検査はこれで終了です。
以上、警察庁HP資料の引用により再現しました。
ちなみに今回「パターンA」をもとにして記事を作成しました。
パターンB~Dまで合計4つが練習問題として使えますので、ご家族やご友人などに手伝ってもらってやってみると良いかもしれませんね。
せっかく国が「認知機能を訓練する機会をくれている」のだから前向きに有効活用しましょう!
3年に1回、認知機能を高める絶好の機会と言えるでしょう。
いかがだったでしょうか。
かなり細かく再現しましたのでイメージはなんとなく掴めたのではないかと思います。
認知機能検査について、YouTubeの動画などでも模試のような形で再現を行っている方もいらっしゃるのでそちらを参考にしても訓練になると思います。
YouTubeで「認知機能検査」と検索すると色々出てくるので気になる方はチェックしてみてください。
認知機能検査について詳しいQ&Aが警察庁HPに掲載されています。
もし何か疑問点があるのであればこちらを一読してみると良いかもしれません。
ついでに、復習がてらこの後の手続の流れを再度確認してみましょう。
先日の記事の再掲になります。

今まさに再現したのが中央あたりの「認知機能検査」となります。
36点以上取れているのであれば、右に進んで「高齢者講習」という流れになります。
弊社が独自に警察庁のご担当者様にヒアリングを行いましたところ、ほとんどの方が「認知症のおそれなし」との結果が出るらしく、「認知症のおそれあり」と判定される方の方が珍しいそうです。
検査なので心配されている方も多いでしょうが、全く心配は無用です。
万が一、点数を下回ったとしても再度検査を受けることができますし、たまたま調子が悪かっただけの可能性もあります。その後の医師の診断によってちゃんと調べてみるまでは認知症かどうかはわかりません。
ただ、認知機能が低下しているという自覚があるのであれば、重大な交通事故を起こしてしまう前にご家族と相談をしたうえで運転免許の返納などを検討するのもよいかもしれません。
重大な交通事故を起こしてしまうと、被害者の方はもちろんのこと、加害者であるご本人にとっても不幸になってしまいます。一度自動車事故が生じてしまうと、刑事裁判から民事裁判まで本当に大変なことになります。
近年、自動車事故で有名なのは東池袋自動車暴走死傷事故でしょう(リンクはwikiです)。
被害者の遺族の声も痛ましいですし、加害者としても事故当時87歳でそこから刑事裁判と民事裁判を行っており、結局結論が出たのが90歳を過ぎてからでした。本当に悲しい事故だとしか言いようがありません。被害者の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
しかし、全くもって他人事ではないのです。高齢者が運転するというのは、こういうリスクを常に抱えてるんです。運転免許の返納というのも1つの選択肢として頭に入れておくべきでしょう。
まとめ
- 認知機能検査の予約はできるだけ早く行うこと。
- 検査当日の年月日、曜日をしっかり確認しておくこと。
- 時計やスマホは使えないので検査の開始時刻を直前に確認しておくこと。


