私の相続人はだれ?①

相続手続

前回までのシリーズは遺言を書くにあたって遺留分という制度を知っておいた方が良い、という話でした。

それでは遺留分ってどうやって計算すれば良いの?って話ですが順を追って説明します。
具体的な話に踏み込む前に、第1回目は用語の整理や大事な考え方を見ていきます。

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用語の整理

被相続人(ひそうぞくにん)

「被」というのは「される」という意味ですから、「相続される人」という事です。
ある人が亡くなったらその人の遺産が動きますが、その遺産を元々持っていた人と考えるとわかりやすいかもしれません。相続というのは1件1件考える事が基本ですので、「相続される人が誰の話なのか?」というのは当たり前に聞こえるかもしれませんが意外と大事です。

相続人(そうぞくにん)

こちらは「相続する人」という意味になります。
被相続人の遺産を実際に受け取る人の事を指します。
実際に誰が相続人となるかというのは民法にルールが定められておりますが、遺言や廃除などでルールが曲がる場合があります。
ルを曲げずに民法の条文どおりに考えるんだよ、という事を含めて「法定相続人(ほうていそうぞくにん)」と呼ぶ場合もあります。「法定」とは法律で定められた、という意味です。民法に書かれているルールで考えた相続人、ってことですね。

推定相続人(すいていそうぞくにん)

正確な定義ではありませんが「推定」というのは「特別な事情がなかったら、こう考えましょう」というようなニュアンスの言葉になります。ですので「とりあえず相続人はこの人だよね」と言うことを指す場合に用いる言葉です。 ある人が亡くなると相続が開始しますが、相続開始前に考える話が「推定相続人」、相続開始後に考える話が「相続人」という用語の使い方だと考えるとわかりやすいかもしれません。

前回まで遺言を書こうとするタイミングの話をしていましたから、遺言者は当然ですがまだ生きていますよね。相続は開始していないので正確に言うと「推定相続人」は誰か?という話になります。

相続の基本的な考え方

こちらもごく常識的な話ですが、念のため確認をしておきましょう。

いつ相続が始まるのか?

相続というのは「亡くなってから」始まります。
民法ではこのように規定がされています。

民法
(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。

e-gov法令検索(民法

ここから次の重大な原則が導かれます。

同時存在の原則(どうじそんざいのげんそく)

相続人になるためには、被相続人が亡くなった瞬間に生きていなければならないというルールです。民法という法律が厄介な部分ですが、明文化されていない原理原則というものが山のようにあります。

じゃあ同時に亡くなったらどうなるのか?
こちらは民法に正面から規定がされています。

民法
第六節 同時死亡の推定
第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

e-gov法令検索(民法

「同時死亡の推定」と呼ばれる規定ですが「お互いがお互いに相続しない」という意味になります。
定義やルールの説明だけしてしまうと概念的でわかりにくいので、具体的に見てみましょうか。

同時存在の原則・同時死亡の推定の具体例

例えば、山田A郎・山田B郎が同じ自動車に乗っていて事故に巻き込まれて2人とも亡くなってしまったとします。
どちらが先に亡くなったのか明確な時間がわからない場合だってありますよね。
この場合に適用されるのが同時存在の原則・同時死亡の推定というルールになります。
つまり、A郎とB郎は「お互いがお互いに相続しない」という関係になります。

同時存在の原則・同時死亡の推定

相続事件は1つ1つ考えることが基本ですから、「山田A郎の相続事件」と「山田B郎の相続事件」は別々に考えなければなりません。

「山田A郎の相続事件」というのはA郎の遺産が誰に行くか?という問題で、「山田B郎の相続事件」というのはB郎の遺産が誰に行くか?という問題ですね。
これらは別々に考えていく必要があり、混ぜて考えてはいけません。
とにかく「相続事件は1つ1つ考える」というのは基本中の基本で、急所の考え方です。

もうちょっと噛み砕いて言うと「山田A郎の相続事件」でB郎は子供ですが、A郎の遺産は行かない。
「山田B郎の相続事件」でA郎は父親ですが、B郎の遺産は行かない。というわけです。
ある人の相続事件で相続人を考えるとき、まずは「その瞬間生きていたか?」を見る必要があるのです。

A郎とB郎の相続事件の結論はまだ解説していないルールがありますので、宿題としておきましょう。

宿題

山田A郎の法定相続人は誰でしょう?
山田B郎の法定相続人は誰でしょう?

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