前回までのシリーズは遺言を書くにあたって遺留分という制度を知っておいた方が良い、という話でした。
それでは遺留分ってどうやって計算すれば良いの?って話ですが順を追って説明します。
具体的な話に踏み込む前に、第1回目は用語の整理や大事な考え方を見ていきます。
用語の整理
前回まで遺言を書こうとするタイミングの話をしていましたから、遺言者は当然ですがまだ生きていますよね。相続は開始していないので正確に言うと「推定相続人」は誰か?という話になります。
相続の基本的な考え方
こちらもごく常識的な話ですが、念のため確認をしておきましょう。
いつ相続が始まるのか?
相続というのは「亡くなってから」始まります。
民法ではこのように規定がされています。
民法
e-gov法令検索(民法)
(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。
ここから次の重大な原則が導かれます。
じゃあ同時に亡くなったらどうなるのか?
こちらは民法に正面から規定がされています。
民法
e-gov法令検索(民法)
第六節 同時死亡の推定
第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
「同時死亡の推定」と呼ばれる規定ですが「お互いがお互いに相続しない」という意味になります。
定義やルールの説明だけしてしまうと概念的でわかりにくいので、具体的に見てみましょうか。
同時存在の原則・同時死亡の推定の具体例
例えば、山田A郎・山田B郎が同じ自動車に乗っていて事故に巻き込まれて2人とも亡くなってしまったとします。
どちらが先に亡くなったのか明確な時間がわからない場合だってありますよね。
この場合に適用されるのが同時存在の原則・同時死亡の推定というルールになります。
つまり、A郎とB郎は「お互いがお互いに相続しない」という関係になります。
相続事件は1つ1つ考えることが基本ですから、「山田A郎の相続事件」と「山田B郎の相続事件」は別々に考えなければなりません。
「山田A郎の相続事件」というのはA郎の遺産が誰に行くか?という問題で、「山田B郎の相続事件」というのはB郎の遺産が誰に行くか?という問題ですね。
これらは別々に考えていく必要があり、混ぜて考えてはいけません。
とにかく「相続事件は1つ1つ考える」というのは基本中の基本で、急所の考え方です。
もうちょっと噛み砕いて言うと「山田A郎の相続事件」でB郎は子供ですが、A郎の遺産は行かない。
「山田B郎の相続事件」でA郎は父親ですが、B郎の遺産は行かない。というわけです。
ある人の相続事件で相続人を考えるとき、まずは「その瞬間生きていたか?」を見る必要があるのです。
A郎とB郎の相続事件の結論はまだ解説していないルールがありますので、宿題としておきましょう。
宿題
山田A郎の法定相続人は誰でしょう?
山田B郎の法定相続人は誰でしょう?