私の相続人はだれ?⑦

相続手続

遺言を書くにあたって遺留分という制度を知っておいた方がよく、遺留分を計算するためには相続制度を知る必要があります。
第7回目は「代襲相続」についての考え方を見ていきます。

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代襲相続(だいしゅうそうぞく)ってなに?

ざっくり言うと、亡くなって遺産が相続される人(B郎)よりも以前に子供(C郎)が亡くなっていた等の特別な事情があるケースでC郎の子(D郎)がいるという話になります。
おそらく言葉で説明しようとすると何のこっちゃとなるので具体的に見ていきましょう。
まずは、前回までの復習からです。

再掲「第一順位

B郎の相続を考えるとき、子のC郎がいるのなら第一順位としてC郎が相続人になりました。
しかし、C郎がB郎よりも先に亡くなっているのなら、二番手として第二順位(A子)にいきます。

再掲「第二順位

この話でC郎に子D郎がいるとこのようになります。

代襲相続

結論としてはB郎の相続人は配偶者のB子・第一順位のD郎が相続人になります。
このケースのポイントを挙げるのなら、次のとおりです。

  • C郎の代わりにD郎が代襲して相続すること。
  • 代襲相続では第二順位のA子は相続人とならない。
  • C子はそもそもB郎と血の繋がりがないので相続人にはなれない。
    C郎の配偶者ですが、B郎と結婚した人ではありませんよね。

代襲相続の条件とは?

まずは根拠条文を見てみましょう。
相続というのは法律で決められた非常に厳格なルールです。
ただ、現実の事例としては前述の事例を押さえておけば十分なので読み飛ばして大丈夫です。

民法
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定(相続欠格 ※筆者注)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

e-gov法令検索(民法)

これを代襲原因と呼びますが、なんでもかんでも代襲が生じるわけではないのです。
①以前死亡②相続欠格③廃除の3つのケースに限られます。
実務として圧倒的に多いのは①以前死亡のケースで、C郎死亡→B郎死亡→D郎の代襲相続、という前述の時系列になります。
それからB郎の第一順位の話(子C郎・孫D郎)だというのもポイントです。第二順位(母A子)や第三順位(B郎の兄)は、それぞれルールが少しだけ違います。
ただ、実務としてそれほど多い話ではないので今回は割愛します。

各種の資格試験で相続放棄が代襲原因とならないって話はなぜかやたらと頻出です。
相続放棄というのは「先祖の大借金を子孫が脈々と未来永劫受け継がなければならないのは不合理だ」という考え方からきている制度です。従ってここで代襲が生じるとなると趣旨を没却してしまいます。

「浪費癖のある親の借金1億円を子供が頑張って働いて返した」というような話をさも美談かのように取り上げる話を稀に目にしますが、法律家としては「返す必要なんてなかったのに、なんで専門家に相談しなかったんだろう」と思ってしまいますね。所定の期間内に相続放棄を行っていれば一族全体として1円も払う必要がないケースです。
もちろん、家訓や信念として「受けた恩は返す、借金を踏み倒すなんてとんでもない」という考え方を否定するわけではありません、それはそれで立派です。
以前もこういう話をしましたが、日本の法律というのは使う使わないは自由です。しかし困ったのなら自分から手を挙げないと積極的に困っている人を救ってはくれません。

各種資格試験の受験生のために相続放棄について一応触れましたが、そもそも実務的に相続放棄はそれほど頻繁に見る話でもないので流してもらっても大丈夫です。

代襲相続というのは資格試験対策であれば後続論点がまだまだ論点が沢山あります。
しかし本シリーズのテーマとしては「遺言にあたって知っておくべき相続」ですのでこの辺りまで知っておけば十分でしょう。
さて、次回は「第1回目の宿題の答え」についてです。

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