私の相続人はだれ?④

相続手続

遺言を書くにあたって遺留分という制度を知っておいた方がよく、遺留分を計算するためには相続制度を知る必要があります。
第4回目は「法定相続人の順位」の基本的な考え方を見ていきます。

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法定相続人には順位がある

前回の記事で「血が繋がっている必要がある」と表現しましたが、これはあまり正確ではありません。 まずはざっくり理解する必要があるので、そのような表現をしただけです。
正確な規定は民法に定められています。
やや難解な規定なので読み飛ばして大丈夫です、しっかりかみ砕いて解説します。

民法
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
 被相続人の兄弟姉妹
 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

e-gov法令検索(民法)

血族相続人の順位

民法の定める前述の規定は「相続人は順位制である」という意味になります。
まずはその順位を見てみましょう。

  第一順位:子

  第二順位:親

  第三順位:兄弟姉妹

あまり正確ではありませんが、ざっくり言うとそのようなルールです。
細かい話は後に譲るとして、まずは大雑把で良いので理解しましょう。
アウトラインだけ掴むのであればそれほど難しくないはずです。

順位とは結局どういう事か?

具体的に言えば、第一順位がいれば第一順位(子)、第一順位がいなければ第二順位(親)、第二順位がいなければ第三順位(兄弟姉妹)という順番になります。
どれだけ仲が良くても、子や両親が生存しているのであれば兄弟姉妹は相続人ではなく対策をしなければ1円もいきません。
事例として見た方がわかりやすいので図示してみましょうか。

第一順位が相続人となるケース
第一順位が相続人となるケース

第一順位(子)がいるのなら最優先で相続人になります。
他の順位の人(両親・兄弟姉妹)が相続人になることはありません。
仮に母A子に遺産を渡したいのであれば生前贈与・遺贈をするなどして対策を行うべき事案です。

第二順位が相続人となるケース
第二順位が相続人となるケース

第一順位(子)がおらず、第二順位(両親)が生存しているのなら二番手として相続人になります。
他の順位の人(兄弟姉妹)が相続人になることはありません。
先ほどと同様に第三順位の人に遺産を渡したいのであれば何らかの対策が必要です。

第三順位が相続人となるケース
第三順位が相続人となるケース

第二順位(子)・第二順位(両親)がおらず、第三順位(兄弟姉妹)が生存しているのなら三番手として相続人になります。
相続という分野で兄弟姉妹は冷遇されている節があります。
私の恩師の教えでは「兄弟のカネをあてにするとはナニゴトカ!」と覚えさせられました。
若干笑い話ですが、実際問題として民法はそのように考えているところがあります。
B郎の兄弟姉妹は基本的にB郎の遺産が行くことはありませんので、確実に渡したい事情があるのであればきちんと対策を打っておく必要があるとは言えます。

血族相続人がいないケース

はて、じゃあ第三順位(兄弟姉妹)がいなかったらどうなるのか?
そういう鋭い読者様のために一応補足しておきます。
例えば前述の事例に即していうとこのような話になりますよね。

第三順位もいないケース

この事例で言うと配偶者が相続人ですので、全ての遺産が配偶者にいきますね。
仮に配偶者がいなければ「相続人不存在」という状況になります。
B郎の相続人が誰もいない!という意味の法律用語が「相続人不存在」と言います。

各種の資格試験で典型的な頻出論点なので一応触れておきますが、相続人不存在になった場合にも順位があります。
相続人不存在→特別縁故者→他の共有者→国庫という流れとなり、最終的に誰もいなければ国の懐に入ることになっています。

民法
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
 前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
(最判平成元年11月24日)
共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法九五八条の三(※旧法の条文。現行法は958の2。執筆者注釈。)に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法二五五条により他の共有者に帰属する。

e-gov法令検索(民法)、最判平成元年11月24日(裁判所ホームページ)

最後は資格試験の受験生のために一応触れただけです。
現実の事例としてはどちらかと言えばレアケースなので読み飛ばして大丈夫です。
さて、次回は「連れ子と相続」について少々踏み込んで見ていきましょう。

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