激動の時代を生き残るための高付加価値経営

企業・経営・創業

近年、物価高の高騰、人件費の上昇、人材確保の困難性、労働環境整備への圧力、増税への流れなど我々経営者にとって外部環境は惨憺たる状況です。
国のスタンスは「決めたことだから、自分たちで対策してね」というものですが、多くの中小企業にとってコトはそう簡単なものではありません。

安倍元首相は働き方改革を提唱しましたが、当初掲げられた思想は「労働生産性の向上」というものでした。
この根本思想そのものは私は妥当な方向性だと思っています。
今回は「労働生産性」をテーマに解説を行います。

労働生産性と付加価値について

「労働生産性」と聞いたときに真っ先に思い浮かぶのは、業務効率化ではありませんか?
J-Net21の記事では次のような解説がなされています。

労働生産性の考え方

同記事によれば、労働生産性を次のように定義しています。

労働生産性 = 産出価値 / 投入リソース

一般に労働生産性向上を考えると、業務効率化として分母を下げる取り組みです。投入するリソースを指し人員削減、時間やコストの削減といったことです。
同記事によると、付加価値の向上として分子を上げる取り組みも重要だといいます。

※ここでいう「付加価値」とは、例えば粗利や限界利益といった数値で近似できると思います。現場での運用については、部門別・店舗別・案件別ごとに付加価値を測れる体制構築をすると管理運用が容易かと思います。
(引用/J-Net21:“創造生産性”の向上で、中小企業も付加価値アップを目指せ

先日、「行政書士のための生成AIセミナー」を登壇させて頂きましたが、例えば生成AIは「業務効率化・作業短縮・コスト削減」であるという文脈の記事をよく散見しています。
確かにそれも間違いではないのですが、しかし、「価値創造・思考補助・付加価値向上」に真髄はあるのではないかと私は見ています。
同セミナーの第2回においては「母国語併記」という基本活用例をご紹介させていただきました。
行政書士は外国人経営者(許認可・ビザ)、外国人労働者(ビザ)が顧客となるシチュエーションが多い職種です。
日本が好きで日本で働きたいという方も非常に多く、基本的には日本語が堪能な方ばかりです。
しかし、そこにはネイティブ並みの語学力の方もいれば、ギリギリ日常生活レベルの語学力など様々です。
そんななか、日常的なメールや業務資料に日本語と母国語が併記されている場合の安心感はいかほどのものでしょうか。

外国人法務を支援する行政書士は、基本的に語学が堪能な先生が多いとはいえます。
しかし、事務所に来所するお客様は様々な国籍の方がいらっしゃるわけです。
全世界言語対応を小規模事業者が行おうとしたときに、人件費の問題から実現は非常に困難なものとなります。
そうしたことを考えたとき、果たしてこれは「業務効率化・作業短縮・コスト削減」なのかなと感じます。

三方不幸の回避策

冒頭でご説明したとおり、執筆時現在(2025年9月)の国内状況は悲惨な状況です。
多くの事業者にとって、取り巻く外部環境はまさしく逆風の最中にあるといってよいでしょう。
コスト削減(分母減少)も重要な要素ではありますがいずれ限界が訪れます。
今、必要なのは価値向上(分子増加)ではないかと私は見ています。

特に物価高騰に伴って我々経営者は判断を迫られています。
価格据え置きで低価格サービスに切り替えるか、価格上昇で高付加価値サービスに切り替えるかです。

価格を不当に抑え続けるとどこにしわ寄せがくると思いますか?
まずは安かろう悪かろうで従業員に負担がいきます。
低賃金や長時間労働が必須条件となるからです。
そうなると下記のような三方不幸の可能性が生じます。

三方不幸の状態

・経営者:利益が確保できず、再投資できない。
・従業員:低賃金、長時間労働、やりがい搾取。
・顧客 :低品質のサービス、事故リスク上昇。

残念ながら士業の業界では、たびたび不祥事の報道がなされています。
【参考記事】
(TBS NEWS DIG)成年後見人として管理する口座から547万円を横領した弁護士 福岡地裁「制度への信頼揺るがす悪質な犯行」として有罪判決
(産経新聞)詐欺罪の司法書士に有罪、元連合会副会長 コロナ給付金100万円詐取
(livedoor News)詐欺の疑いで行政書士を再逮捕 6千万円被害か

こういった不祥事の背景には「金銭的な困窮」というのも1つの要因であると思っています。
廉価×薄利多売も1つの方針であり否定はしませんが、高付加価値×適正利潤により「正しく大きく稼ぐ仕組みづくり」も重要であると私は考えています。
ここで重要なのは「お客様が納得できる、お客様の便宜になる」という前提を崩さない姿勢です。

私は行政書士認定経営革新等支援機関ですから、補助金/助成金の支援業務を日常的に行っていますがどのようにすれば高付加価値×適正利潤」に結びつくのか?というところで日々試行錯誤しています。

付加価値のために必要なこと

付加価値を付けるといっても、まさに「言うは易く行うは難し」です。
経営者としても支援者としても、実務を通して問い続けています。

つまるところ「問いの姿勢」、即ち「経営哲学」といえる領域であり、どのような理念を抱いて社会貢献につなげるか?という根幹的テーマを主軸に置くべき話です。
特に我々支援者としては文字通り「支援しか」できず、実行するのはあくまでも「事業者ご自身」なわけです。

例えば最近、日経BPで次のような記事が掲載されています。
(日経BP)鹿島茂×滝田洋一 「道徳的になるには経済人になれ」と言った渋沢栄一
ここでは「道徳と経済の合一性」について論じられていますが、明確な経営理念の構築、即ち経営哲学の充実が求められるのではないかと私は思っています。
繰り返しになりますが、どんな自社製品サービスを通じた「社会貢献」を行ってお客様に付加価値を「感じていただく」のかということです。
経営理念から派生した高付加価値経営、このストーリーが肝になると私は見ています。

ひとつのフレームワークとしては、次のようなものがあるかと思います。

高付加価値経営による幸せの連鎖

「安かろう悪かろう」という状況では前述のとおり「三方不幸」になる可能性があります。
高付加価値による顧客単価上昇というのは、顧客目線で考えたときに必ずしも悪いことではありません。
顧客目線で「その価格帯で納得できる製品サービスなのか」というところが全てになるでしょう。

現在、凄まじい速度で生成AIが進化し続けています。
私たち士業はもちろん、様々な商品/サービスが生成AIに代替されかねない状況にあるといえます。
特に、これから育ってくる若い世代においては「生成AIはあってあたり前」であり、日常的な課題解決は生成AIで大抵のことは解決できるということになるでしょう。

もちろん、生成AIには幻視リスク問題を包含しており(誤った情報を正しいかのように表示してしまう現象)、その点で当面の間は私たち専門家には一定の猶予があるとはいえます。
しかし、いずれ間違いなく専門家の存在意義を問われる時代になるはずです。
だからこそ、「経営哲学」が今後より重要になるのではないでしょうか。
つまり、経営者は常に自問自答して経営理念という軸を何度も再定義する必要があると思います。
そして我々支援者の存在意義は、まさにここの言語化のお手伝いではないかと考えています。
石はどれだけ磨いても石であって、我々事業者は選ばれるためのダイヤの原石であり続ける必要があります。

みなさんは「分子を上げる取り組み」考えていますか?

【参考記事(J-Net21)】

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