認知症サポーター養成講座の登壇について(2024/4/12)

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先月に引き続き弊社の田中秀忠が、民間企業様主催の認知症サポーター養成講座(従業員向け)の講師を登壇させて頂きました。

認知症サポーター養成講座とは

認知症サポーター養成講座とは、自治体等が主催する認知症の啓発にかかる講座で、現在令和5年までに1500万人が受講しているとされます。
今年の令和6年1月1日施行の認知症基本法によれば次のように規定されています。

共生社会の実現を推進するための認知症基本法
第三章 基本的施策
(認知症の人に関する国民の理解の増進等)
第十四条 国及び地方公共団体は、国民が、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めることができるよう、学校教育及び社会教育における認知症に関する教育の推進、認知症の人に関する正しい理解を深めるための運動の展開その他の必要な施策を講ずるものとする。

共生社会の実現を推進するための認知症基本法(e-gov)

これは令和元年6月18日に定められた認知症推進施策大綱に沿った内容となっており、現在、国や自治体が正面から取り組むべき課題であるとされています。
それもそのはず、日本は令和4年時点で総人口1億2495万人のうち、65歳以上人口は3624万人であり高齢化率は29.0%となっています(『令和5年版高齢社会白書』より引用)。
平成31年の認知症施策推進のための有識者会議(第2回)にて提出された資料によると、認知症の有病率は次のとおりで、75歳を超えると急激に増加するとされています。

『認知症年齢別有病率の推移等について』p2より引用

いわゆる2025年問題(世代の人口割合が多い団塊の世代が75歳以上の年齢となることを発端に、様々な国内の制度上の問題の総称)を考えると、「認知症問題」というのは本当に身近なものになることが容易に想定されます。
これに本腰を入れて国が動こうとしていると言え、本年施行された認知症基本法に基づいて現在国は認知症施策推進本部を設置し、認知症施策推進基本計画を策定しようとしているところになります(2024年4月13日執筆時)。
そうした状況の中、行政書士という法律系専門職として少しでも何かできないか?と考えたとき、この認知症サポーター養成講座の講師をやってみようという流れで現在登壇をさせて頂いております。
行政書士という専門職は、一般には「行政への手続をする人」というイメージがあるかもしれません。
しかし、実は「権利義務・事実証明に関する書類の作成」も独占業務の1つに掲げられており(行政書士法1の2)、遺言書や各種契約書の作成を筆頭にして高齢者関係法務も実は得意分野の1つと言えます。
行政書士が「認知症の講座」を登壇する意味としては、認知症の理解と共に高齢者の法的制度の啓発が行えることであると私は考えています。

認知症サポーター養成講座とは、どんな事を学ぶのか?

認知症サポーター養成講座では、一般に「認知症の基礎的な理解を深めること」に主眼が置かれています。
昨年令和5年10月に改訂された『認知症サポーター養成講座標準教材』によれば同講座の趣旨を次のように挙げています。

認知症の特性や症状の特徴を正しく理解することで、
認知症への恐れや偏見、差別をなくしましょう。
認知症があっても、尊厳と希望を失うことなく、
家族や友人、ご近所の人たちと一緒に、
地域の中で安心して暮らせる社会を考えてみましょう。

『認知症サポーター養成講座標準教材 認知症を学びみんなで考える』p2より引用

正しい理解が大切なのは言うまでもないですが、この「地域の中で安心して暮らせる社会」というのも極めて重要な事だと私も考えています。
少子高齢化が極まった現代の日本において、例えば地域包括ケアシステムといった形で既に取り組まれているところで、特に認知症関連施策においては先ほど挙げた認知症推進施策大綱でも次のように言われています。

第1.基本的考え方
認知症はだれもがなりうるものであり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっている。認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら、「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進していく。

「認知症推進施策大綱」p3より引用

認知症と共生するために地域一体となってサポートできる体制を構築する、今後ますます重要になってくると私も考えています。

民間企業の取り組み

今回、ご依頼があったのは豊島区に本社を置いて事業展開している企業様です。
新人研修の一環としてこの「認知症サポーター養成講座」を導入していらっしゃいましたが、非常に素晴らしい試みだと思います。

前述のような「高齢者の増加」や「認知症有病数の増加」ということに会社全体として問題意識を持っているのでしょう、「認知症に理解のある従業員を1人でも増やす」という事はまさしく前述の通り地域貢献に今後直結していくのではないかと思います。

本講義においては認知症への理解を中心として、各種制度や法整備、各種ガイドライン等々をお話させて頂きました。
今回の講義を出発点として今後の学びのきっかけになればとても嬉しいですね。
こういう先見的な民間企業様が1社でも増えていけば、まさに「優しい世界」になるような気がしてなりません。

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