遺言を書くにあたって遺留分という制度を知っておいた方がよく、遺留分を計算するためには相続制度を知る必要があります。
第3回目は「相続における配偶者」の基本的な考え方を見ていきます。
配偶者は常に相続人となる
こちらは常識的でわかりやすいルールだと思います。
ご存じの方も多いのではないでしょうか。
根拠としてはバッチリ民法に規定があります。
民法
e-gov法令検索(民法
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
前回の事例で考えてみましょうか。
B郎の相続事件を考えるとき、配偶者のB子は生存し・婚姻関係が続いていれば常に相続人になるという意味になります。
ここで注意しなければならないのは、まずは「生存しているかどうか」でしょう。
前回の記事で説明したとおり、「B郎が亡くなった瞬間に生きているか」を考えなければなりません。
また、「婚姻関係が続いているか」というのも注意です。離婚したら法律上の配偶者とは言えませんから、相続人にはなれません。
逆に言えば離婚届を出していなければ、別居状態であったとしても法律上の配偶者であると言えます。
一番注意しなければならないのは「内縁の妻」でしょう。
テレビの昼ドラなどでありそうな設定ですが、現実の世の中にも「内縁関係」というものは案外多いです。
内縁関係は相続人にはならない
まず内縁という身分関係は法律で明文があるわけではありません。
判例法理で確立しているもので、およその定義を書くとすれば次のようなものになります。
正確な定義ではありませんが、俗に言う「同棲している男女」というのが一番イメージしやすいのではないでしょうか。
若いカップルなどで結婚はしていないけど一緒に住んでいる事もありますよね。
余談なので解説は避けますが妾関係(婚姻意思はない、いわゆる愛人とか。)、私通関係(共同生活の実体がなく、ひそかに通じ合っているだけ。)とは一応、区別されるところではあります。
ほぼほぼ結婚している男女と変わらないのだから、内縁関係というのはできる限り法律婚と同視するという考え方があります。
これを準婚理論(じゅんこんりろん)と言いますが、各種の判例法理にて採用されている考え方です。
しかし、一貫しているのが「内縁関係は相続人にさせない」というルールになります。
「内縁の妻」と「法律上婚姻届を出している妻(=配偶者)」の決定的な違いはここになります。
婚姻届を出しているか否かの違いではあるのですが、相続分野においては全く立場が違います。
仮に自分の遺産を渡したい内縁の妻がいたとして、「一緒に住んでいるのだから財産は行くんだろうな」と安易に考えてしまうと、内縁の妻が遺産を1円も貰えない可能性があります。
ただ、「内縁関係にある人」に遺産は一切渡せない!?というわけではありません。
本筋から離れすぎるので割愛しますが、遺贈であるとか生前贈与であるとか特別縁故者制度であるとか渡せる道もあるにはあります。
しかし、まずは「内縁関係」だと何も対策しなければ1円もあげられない可能性が高い、とだけ覚えておけば十分でしょう。
本妻目線だと「離婚してしまったら」相続人になれないので1円も貰えない可能性が高い、とも言えますね。
破綻的別居状態が云々かんぬんと離婚というテーマは判例が山のようにあるところなので詳細は別の機会に譲りますが、B子はB郎と離婚したらB郎の相続人になれないという点で違いはありません。
近年は熟年離婚が増加しているなどと言う話もありますから、自分の老後の生活を守るために案外大事な知識かもしれません。
昭和60年(1985年)には12.3%だった熟年離婚率は、平成17年(2005年)には15.4%となり、令和3年には21.1%にまで上昇しています。
Yahooニュース「熟年離婚が過去最高の割合に!コロナの影響も⁈熟年離婚の原因と傾向を弁護士が解説」より引用
さて、キリが良いのでこの辺で。
次回は「配偶者以外の相続人」について見ていきます。