最近、詐欺事件とおぼしき事件が増えています。
相談会などでも涙ながらに被害を訴える方を見かけることがあります。
特に高齢者を狙った詐欺が多い状況に私も心を痛めています。
今回は、相続に関連する詐欺の事例をもとに、予防策や対処法をお伝えします。
相続に関係した詐欺事件の例
以下は詐欺の事例を簡略化して説明します。
・Xさん:被相続人(亡くなった方)
・Aさん、Bさん:相続人(遺産を引き継いだ方)
・Y社:本物の相続債権者(Xさんの未払債権を持っている会社)
・Zさん:Y社を名乗る詐欺師
プラスの遺産、マイナスの遺産
未払債権とは、まだ支払われていないお金を受け取る権利のことです。簡単に言えば「貰えるんだけど、まだ相手から支払われていない状態」です。
相続債権者とは、亡くなった人(被相続人)から「お金をもらえる権利」を持っている人のことです。
遺産をイメージするとき、もしかすると預貯金などプラスの遺産だけを考えるかもしれません。しかし、こうしたマイナスの遺産も含めて一切合切を引き継ぐというのが相続という制度の注意点でしょう。
上記の事例で言えば、XさんはY社にお金を支払う必要がありました。この状態をAさんやBさんは相続によって引き継ぎます。
マイナスの遺産の代表例としては、月々生じていた家賃の未払であるとか、水道光熱費、医療費などXさんが生前に支払うべきだったお金です。
仮に個人事業主で事業を行っていた方などであれば事務所賃料、買掛金など規模が大きくなる可能性があるでしょう。
マイナスの遺産が大きくて引き継ぎたくない場合には、所定の期間内に家庭裁判所へ下記のような手続が必要なので注意してください。
相続放棄ガイド(参考:裁判所HP)
相続の限定承認の申述(参考:裁判所HP)
Xさんが亡くなり、AさんとBさんが遺産を相続しました。
しかし、遺産にはY社への未払債権も含まれていました。
相続手続はAさんが中心となって行っているので、Bさんは状況を詳しく知りません。
ただ、Y社の未払債権があることは何となく知っていました。
半年ほど経って、Y社の担当を名乗るZさんからBさんに電話がありました。
「今すぐ支払え!でなければ裁判を起こすぞ!とりあえず一部だけ払ったら裁判は勘弁してやる!」
高圧的な電話にBさんは怖くなってしまい、数十万円を言われるがまま振り込みました。
後日、Y社よりAさんとBさん宛に請求書が届きます。
内容を確認してみると、先日Bさんが支払った数十万円が引かれていません。
不思議に思ったBさんが、Y社に電話をしてみると「そんなお金は受け取っていませんよ?Zさんとは誰ですか?」と言われてしまいます。
BさんはZさんに電話をしてみると「この電話番号は現在使われておりません」というアナウンスが流れるだけでした。
ここでようやくBさんは自分が詐欺被害にあったと気が付きます。
BさんはAさんに相談しますが、Aさんとしてもどうしてよいのかわかりません。
詐欺被害にあったら?
万が一、詐欺被害にあったと気付いたらすぐに次の行動をとってください。
- 1.警察に相談する
最寄りの警察署に相談して、事件を報告してください。
下記のホームページも併せてご活用ください。
警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ | ストップ、オレオレ詐欺(警察庁HP) - 2.詐欺の口座凍結の手続を行う
振込先の口座凍結の手続というのもあります。
前述の警察署での相談時に聞いてみるのも良いと思います。
下記のホームページも併せてご活用ください。
振り込め詐欺にあったら(預金保険機構HP) - 3.専門家に相談する
市区町村の自治体では士業による無料相談会を設けていることが多いです。
お住まいの自治体(市役所など)に電話をして、そういった相談会を活用するのも良いです。
例えば、豊島区役所においては次のような無料相談会が定期的に開催されています。
専門家合同相談室(豊島区)
大抵は30分の無料相談ですが、最初の取っ掛かりとしては良いでしょう。
しかし、予約が必要などすぐに相談できないケースもあります。
詐欺事件はすぐに動くことが非常に重要ですから、最寄りの弁護士事務所等に直接相談してみるというのも大事な心得になるかと思います。
前述の手続を踏んだとしても詐欺師に振り込んだお金を取り戻すというのは本当に大変です。
相談会等で弁護士の先生と直接お話をする機会も多いですが、実際問題、本当に難しいようです。
預金口座の凍結は手続的に可能でしょうが、振り込みがあればすぐに預金を移動するでしょう。
ほぼ空の状態の預金口座を凍結したところで、全額が戻ってくるかは非常に疑問です。
電話番号も別名義(携帯電話不正利用防止法の犯罪のケースが多いでしょう。)、振り込んだ預金口座も別名義(犯罪収益移転防止法の犯罪のケースが多いでしょう。)、そもそもZが本名なのかどこの誰かもよくわからない。
そうなればそもそも訴えること自体が難しくなってくるでしょう。
民事訴訟法や民事執行法といった法律によって、理論的に取り戻す手段はありますが執筆時点ではなかなか難しいというのが実情だと言わざるを得ません。
ですので、詐欺にあった後の話よりも「詐欺にあわないようにする」という対策がとても重要です。
詐欺被害にあわないためのポイント
今回の事例では、Zさんに振り込む前にY社に直接確認していたらどうでしょうか?
いわゆる「オレオレ詐欺」でも同様ですが、振込を行う前にしっかりと直接確認をするということが1つの予防策になるでしょう。
- 1.知らない番号からの連絡は、まずは本人に確認すること
今、電話をかけてきている相手が「本当に正しい請求をしているのか?」という視点を持ちましょう。先ほどの例であればZが本当にY社の従業員かどうか、Y社に直接電話をかけてみるといったことです。「オレオレ詐欺」であれば本当に電話をしてきているのが息子か?というような話です。 - 2.急かされてもすぐにお金を振り込まないこと
「オレオレ詐欺」も同様ですが「今すぐ振り込まないと大変なことになるぞ」というのは詐欺師の常套手段だと言えるでしょう。
そもそも振り込む先の預金口座は本当にY社のものですか?
まずは一度電話を切って、冷静になりましょう。 - 3.家族や信頼できる専門家や行政に話を聞いてもらう
まず一人で悩まないことが重要です。
家族や知人にでも良いですが、行政等の相談窓口を利用するのも1つの選択肢です。
例えば、前述の警察庁のHPにも相談窓口がありますので活用するのも良いでしょう。
警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ | ストップ、オレオレ詐欺(警察庁HP) - 4.依頼した専門家に状況をきちんと共有する
今回は相続に関する詐欺事件というのがテーマです。
相続手続は一般の方が自分で行うというのは難しい場合もあり、私たち行政書士など専門家に依頼しているというケースも多いと思います。
その場合には依頼した専門家に必ず一言相談することをお勧めします。
Zから払えと言われてるんだけど払っても良いですか?それだけで全く話が変わります。
今回の事例についても、もしかすると回避できたかもしれません。
まとめ
繰り返しになりますが、詐欺被害にあわないためには日々注意を怠らない対策が非常に重要です。
振り込む前に電話を切って誰かに相談する、これだけまずは覚えてください。
困ったことになる前に専門家にご相談してくださいね。


