あなたの取り分はいくつ?①

相続手続

遺言を書くにあたって、遺留分という制度を知っておいた方がよく、遺留分を計算するためには相続制度を知る必要があります。
先日、相続人についてアウトラインを紹介しました。
今回からは「相続分」について見ていきましょう。ここが遺留分計算の基礎となります。

相続分とは平たく言えば「遺産の取り分」になります。
まずは第1回目として「相続分の決め方」について見ていきます。

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遺産の取り分の決め方

まずは全体像を掴みましょう。
遺産の取り分、すなわち「相続分」の決め方は全部で3種類の方法があります。

  • 遺言による指定相続分
  • 法定相続分
  • 具体的相続分

法定相続分については様々な資格試験でよく出題されますし、高校生の授業でも登場するかもしれません。有名なところですので簡単そうに見えるかもしれませんが、実は「相続分」という単語は多義的で案外難しいです。各種国家資格の受験生でもしっかり理解していない人は多いと思われます。
ここの議論をまともにやるとなると、判例学説入り乱れての難しい話に踏み込まないといけなくなるので、なるべくあっさり解説します。
特に、遺留分算定だけを考えたいのであれば法定相続分だけを理解すれば足ります。ですから、今回の話は流して「そんなもんなんだ」という程度で大丈夫です。

遺言による指定相続分

ある人が亡くなったとき、その遺産は相続人が承継することになります。
例えば亡くなった故人を山田A郎さんとして、奥さんの山田A子さんは先になくなっており、その子供の山田B郎・山田B次がいるという事例で考えてみましょうか。

法定相続分・指定相続分

相続人は第一順位のみですのでB郎・B次となりますが、いったんA郎の遺産は共有状態に入ります。B郎・B次の2人で持ち合っているような状況ですね。 ここでいったん割合を決める必要があるのですが、そのルールが指定相続法定相続分となります。
詳しい話は追って説明していきますが、まずは「大まかな目安を決めた」というイメージをすると良いかもしれません。

上記の事例で山田A郎が次のような遺言書を作成していたとしましょう。

山田A郎

  遺 言 書
遺言者山田A郎は次のとおり相続分を指定する。
 長男 山田B郎 8分の3
 二男 山田B次 8分の5
令和5年4月22日
 山田A郎 ㊞

この遺言で決めた内容が指定相続分です。
遺言書には何を記載しても本人の自由ですが、書いた内容が実現できるかどうか法律で厳格に定められています。
指定相続分は遺言で実現できる事の1つです。

民法
(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定(※筆者注。法定相続分の規定。)にかかわらず、遺言で共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

e-gov法令検索(民法)

意味合いとしては「法定相続分を曲げた」という事になります。わざわざ遺言で指定相続分を決めるという理由は色々あるでしょうが、例えば、長男B郎は独立して実家を出ているけど二男B次はA郎と同居して一緒に暮らしている場合もあるでしょう。後々、A郎の介護が必要になった場合などにB次夫婦に面倒を見てもらうと既にお願いしているといった事情です。それであれば長男のB郎より二男B次の取り分が多い方が公平というものでしょう。もちろん、付言事項にはその理由も書くべきです。二男のB次の方の取り分を多くしているけどこういう事情があるのだよ、と。
遺言による指定相続分は、法定相続分よりも優先度が高いという取り扱いになります。

法定相続分

前述の遺言で指定相続分を定めていなかった場合の話です。
細かい割合などの話は後日に譲りますが、この法定相続分というものはあくまでも「目安」にすぎません。なんとなく「相続人には公平に配らないといけない」という解説を見ることもあるのですが、民法上そんな事は一言も書かれていません。
生活の糧として困窮する事がないように、この法定相続分を基準にして一定割合について遺留分という制度を設けてはいますがそれも任意です。例えば「お母さんは年金暮らしで大変だろうから、働いている僕たちはいらないよ。お父さんの遺産は全部お母さんが相続していいよ。」という取り決めを行う事だって可能なのです。
勿論、このケース、節税対策をまともに講じるのであれば一次相続だけでなく二次相続を見据えて動くべきとも言えます。しかし、それもご家庭の状況によるのです。
何故か公平に配らなければならない、公平にもらう権利があるんだ、そういう風潮があって後々の紛争の火種になっているような気がします。
前述の事例であれば山田A郎の介護を二男B次がするのであれば、長男B郎より多くもらって然るべきでしょう。逆に、A郎の事業を長男B郎が引き継ぐのであれば、事業承継対策を講じる必要から二男B次よりも結果的に取り分が多くなってしまうでしょう。
それぞれの立場や役割、状況に応じて変える方が適切なのではないかなと私は思います。

さて、キリが良いので次回は「具体的相続分」を見ることにしましょう。

まとめ

  • 取り分の決め方は3種類ある
  • 遺言で指定相続分を決めることができる
  • 遺言で決めていなかったら法定相続分となる
  • 相続が発生すると「いったん」指定相続分or法定相続分で共有となる

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