第3回目のテーマは「相続登記をプロに依頼するメリットデメリット」になります。
司法書士(弁護士)などのプロに相続登記を依頼するべきかの判断基準についてまとめてみました。
相続登記は自分でやって良いの?
相続登記に限らず、訴訟であるとか税金の申告であるとか国が関与する手続というのは基本的にご自身で可能です。よって、「相続登記も自分で可能」です。ちなみに売買の登記については銀行が融資条件として司法書士にやってもらえと指定するので、ご自身でやるケースは稀だと思います。
不動産登記を本格的に勉強するとなるとハードルは相当上がると思いますが、こと相続登記について典型的なパターンであれば全く難しくないと思います。
相続登記をプロに依頼したらいくらくらい?
現在士業は報酬の自由化がなされており、地域であるとか事務所によって本当にまちまちです。ラーメン屋によって豚骨ラーメンの値段が違うのと同じ理屈です。
とはいえ目安としては相続登記1件につき5万円~10万円ほどが専門家報酬じゃないかと思います。
それに加えて登録免許税・戸籍・住民票・登記簿の全部事項証明書などの実費がかかりますので、プラス5万円ほどを見ていれば良いんじゃないでしょうか。
なお、トータルいくらかかるかの正確なところは状況により実費部分が大きく変わるので具体的に計算してみないとわかりません。実費で5万円というのはあくまで目安です。ここで言う実費というのはご自身でやったとしても必ずかかる費用になります。
プロに依頼するメリットは?
いくら相続登記が簡単な部類だとは言え、複雑なものはプロにまかせた方が良いと思います。
遺言、清算型遺贈、数次相続、そもそも相続人の判定がプロでなきゃ困難などなどいくらでも手に負えない類型はあります。
個人的にプロに任せた方が良いなと思われるケースは次のような場合です。
生兵法は大怪我の基です、いさぎよくプロに任せましょう。
- 仕事が忙しくて平日に動くことができない方(法務局が平日しか動いていません)
- 遺産分けの話し合いをこれからやろうと思っている方(有効な協議書作成が難しいです)
- 相続人の数が多い方、複雑な方(法定相続人の判定がそもそも難しいです)
- 両親ではなく祖父母等からもらっていた方(代襲相続だとか遺贈だとかへの理解が必要です)
- 法務省のHPを見たがさっぱり意味がわからなかった方(流石に危険です)
自分でやれそうな相続登記ってどんなもの?
不動産登記を全く勉強したことがない方でやれそうなものはズバリ「法定相続分による場合」です。
これであれば難しいのは法定相続分をきっちり出すというとこくらいです。法定相続分の考え方については弁護士の先生のホームページをはじめとして様々なところで解説があるはずです。遺産分割協議書など余計な書類を作らなくて良いところも素人目線ありがたいですよね。
身内に民法を勉強したことがある人がもしいれば相続分の割合を聞いても良いかもしれません。一般論として各人の法定相続分だけを判断するのであれば司法書士法に違反はしないと思われます(個別具体的な相談は場合によってはアウトな可能性があるので避けましょう)。
あとご自身でやる注意点ですが、必ず法務局の事前相談(無料・要予約)を受けましょう。
ちなみに令和5年3月に弊社がリサーチしたところ、予約後に当日すぐは難しいようですが、翌日であれば事前相談が可能という法務局がありました。まだ相続登記の義務化という情報が浸透していないのでしょうか、今は無料相談窓口は空いているようです。
ご自身でやるなら今が空いていてチャンスだと思います。
これは想像ですが免税期限の令和7年3月間近になると鬼のように混雑すると思います。
自分で相続登記をするデメリットはあるの?
所有者不明問題の発端の1つとして「相続した人がネズミ算式に増えてしまった」ということがあります。民法を中心とした権利にかかる法律で「共有」という状態は非常に使いにくい側面があります。令和5年4月にスタートする新制度においても、正直十分だとは思えません(マシにはなりました)。
ですから私個人の意見としては、法定相続分で相続登記を入れるというのはご自身の子孫が使いにくいというマイナス面があると思っています。その後の子孫が困ったことにならないような状態にするには、「不動産は1人に継がせて共有を避ける」ということになります。
ですので、理想を言えば「遺言により具体的相続分の指定を行って単有にする」だとか「遺産分割協議を行って単有にする」のどちらかになるでしょう。ただ、実質的なデメリットというだけで法律的に何か違反があるとかそういったものではありませんので、あくまでもご自身の判断による話になります。
その他、運用・リスクの検討であるとか相続税の最適化であるとかまで突っ込んで完璧にやりたいのであれば、間違いなく専門家に依頼すべきだと思います。
流石にその辺りの話になると専門家でないと手に負えないような気がします(全てを網羅して全てを自力でやる方もいらっしゃるかもしれませんけど。)。
相続登記を自分でやってみたい!
不動産登記なんてなかなか申請する機会はないと思います。
貴重な経験だと思うので、可能ならご自身でやってみても面白いかと思います。
ただし法定相続分による相続登記は前述のデメリットがある点には留意してください。
詳しい解説は法務省HPの「法定相続編」というパンフレットをご覧ください。
一読しましたがなかなかわかりやすい解説だと思いました。
マスコットキャラクターのトウキツネくんも可愛いです。
住民票や戸籍を取得するときの申請は、申請書が市役所に設置されていますが、相続登記の申請については申請書を自分で作らなくてはなりません(だから司法書士という登記に特化した国家資格が存在しています。)。
しかし、不動産登記の申請書について法務省HPからダウンロードすることができます。
相続登記についてたくさん種類がありますが法定相続なのであれば「19)所有権移転登記申請書(相続・法定相続)」というテンプレートになります。
注意点としては条件が変わると申請書のテンプレートも変わってしまうという点です。
その辺りも含めてご自身でやる場合には法務局の事前相談は必須だと思います。
詳細はパンフレットと申請書テンプレート(記載例)に任せるとして、相続登記の手続の概略を書いてみますので参考にしてみてください。
行政手続を自分でするポイントは、細かい話に踏み込む前に、大筋の流れを掴むことがコツです。
詳しい話は次回に譲りたいと思います。