家系図を作成するとき最初にやるべきことは「一族の戸籍を収集すること」になります。
第2回目のテーマは「戸籍の取得方法」についてです。
この辺りが戸籍を取得したことがない人だと難しくなってくるのかなと思います。
またまた話が長くなりますが興味ある方はお付き合いください。
戸籍を実際に取得してみよう
どこに取得請求をすればいいの?
話を単純化するため、1系統(全ての父方だけを辿っていく)の調査を考えてみましょう。
仮に8系統の調査だとしても、全系統の調査だとしても、1系統の調査をそれぞれ行っていけば良いだけの話になります。
まずは「ご自身の本籍地」の調査がスタートラインになります。
もしもご自身の本籍地が正確にわからないのであれば、住民票を「本籍地入り」で取得してみるとそちらで判明します。
現在の本籍地は住民票とリンクされています。
具体的にどこに請求するかは基本的には戸籍に書かれている本籍地の市区町村の役所となります。ただし、戸籍の発行窓口がどこにあるのかは各自治体によります。
例えば、東京都豊島区には豊島区役所に窓口が。
大阪市では市役所も区役所どちらでも窓口が。
横浜市では市役所は発行業務をしておらず区役所のみに窓口が・・・、というような感じで自治体により若干取り扱いが違います。
いずれにしても、具体的にそれぞれの役所に電話で問い合わせてみると良いです。
とりあえず役所のホームページを検索して探して、代表番号にかけてみましょう。
担当部署に繋いでくれるはずです。
どんな請求方法があるの?
自分の戸籍をどこの役所の窓口で発行できるかがわかれば、具体的に請求をすることができます。
やり方としては2つの方法が一般的です。
- 窓口による請求
- 郵送による請求
おそらく一般的には「窓口による請求」ではないかと思います。
発行窓口がある役所に行って、申請書を書いて、現金を支払って、窓口で戸籍を受け取るという流れです。
戸籍の取得請求で最も簡単な方法はこれです、窓口でわからない事を聞けば良いので楽ちんです。
しかし、本籍地が遠方の場合には飛行機の往復代金7万円支払って戸籍を現地の役所に取りに行くなどありえませんよね。もちろん「郵送による請求」が認められています。ただ、今回の郵送請求は自分自身の戸籍だけではなく、ご先祖様全ての戸籍を収集するのですから郵送だと少々難易度が上がります。
具体的なやり方については各自治体で若干異なる場合があって一律には言えないので、該当する窓口に相談してみると良いでしょう。
多少難易度が上がるとはいえ、役所のご担当者様は聞けば親切に教えてくれるはずです。
説明通りに行えば全く知識がなくても郵送請求は可能だと思います。
しかし、管轄の問題というものがあります。
話がややこしくなるのはここからです。
戸籍の管轄ってなに?
前提となる知識からお話します。
戸籍に記載されている「本籍地」というものは、現実の住所に一致するとは限らない、これが話の発端です。
例えば、
- 本籍地 東京都豊島区~
- 現住所 東京都豊島区~
上記のように「本籍地」と「住所」が一致する場合もあるでしょう。
しかし、
- 本籍地 東京都豊島区~
- 現住所 大阪府大阪市~
のように一致しない場合もあるのです。
これは「本籍地」は「住所」ではないという事から生じてしまった話になります。
「住所」とは、実際に住んでいる場所のことを言います。
法律上、文字通りなのでこちらはわかりやすいですね。
民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
(住所)
第二十二条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。
それでは「本籍地」とは一体何者なんでしょう。
本籍地ってなに?
結論から言うと、「本籍地」とは戸籍のラベリングのためのもの、という理解があれば十分です。
元々、戸籍というのは身分関係を示しつつ日本人の全国民を名簿化したものです。
なぜそんなことをしたのかと言うと話は江戸時代に遡りますが、キリスト教でないことを証明させるため、そして租税の取り損ねがないようにするため、の間違いなくこの2つに戸籍制度の由来があります。ちなみに現在においては身分関係・相続関係を明確化するため、というように存在意義は変遷しているように思います。
要するに各名簿にそれぞれネーミングをしなければ運用が難しかったというわけです。
どこの誰にその名簿の管理義務があるのか、責任の所在をはっきりさせたかったのでしょう。
原始的ですが、名簿に書くラベルの表示方法を「本籍地+筆頭者(戸主)」としたってわけです。
この管理方法が現在でも踏襲されていて、例えば父A・母B・子Cといった場合に、A・B・Cは全員同じ名簿(=戸籍)にて管理されています。
そのラベルが、例えば「本籍地:東京都豊島区~+筆頭者:A」ということになります。
しかし、上記大阪市の例(再掲)だと手続がとんでもなく面倒だとは思いませんか?
- 本籍地 東京都豊島区~
- 現住所 大阪府大阪市~
この例だと戸籍を実際に管理しているのは東京都の豊島区役所です。
なので戸籍を取ったり、名簿の書き換えをしたりのためだけに、大阪市から数時間かけてわざわざ東京の豊島区役所までいかなければなりません。
郵送請求という代替手段があるにせよ、毎回毎回流石にそれでは不便です。
そこで東京都豊島区から大阪府大阪市に引っ越した筆頭者であるAさんは「転籍」という手続が一定の条件のもと認められています。
転籍を行えばそれまで「東京都豊島区役所」で戸籍は管理していましたが、それをこれからは「大阪府大阪市役所」で管理してもらうことになります。
しかし、転籍前の戸籍については従前の「豊島区役所」にて保管を続けます。「大阪市役所」で管理をするのはあくまでも転籍後の話についてだけです。要するに、それまで行っていた豊島区役所の戸籍業務を一切合切、大阪市役所にて引き継いでくれるというわけではないのです。
少々ややこしくなってきたので図示するとこうなります。

上記の図について説明をすると、先日の記事で紹介したように、戸籍というのは戸籍法の改正によって新しく作り直される場合があります。従前、豊島区役所にて「①戸籍」で管理していたが、戸籍法が改正されてルールが変わったので作り直され「②戸籍」ができた、という流れです。
そして転籍を行ったので、そこから先の戸籍は大阪市役所で管理することになって「③戸籍」ができた、というような事例になります。
従ってこの場合、家系図調査のほか相続人調査などで必要となる戸籍は「①戸籍」「②戸籍」を豊島区役所に請求をして、「③戸籍」を大阪市役所に請求をする、ということになります。
以上の話はあくまで1人に着目した場合の話です。
1系統だとしても、これを登場人物それぞれで個別に考える必要があります。
全系統ともなれば対象人数も膨大になるため、それなりに大変かもしれません。
登場人物が100人を超えることも珍しくはないと思います。
ちなみに余談ですが、転籍のほか婚姻などによっても現行法下では戸籍が変わります。 新しい世代については現行の家族法による知識で良いのですが、家系図作成となると古い世代も必要なので戦前の戸籍も必要となりますよね。
戦前の戸籍は旧家族法、つまり当時の法律を元にして作成されていますから、そちらの理解もある程度は必要となります。
戸主、分家、家督相続、隠居相続など現行法下では絶対に登場しないような用語が飛び交います。
また、古い時代は養子縁組が頻繁に行われており、家系図が複雑怪奇なことになっている場合も珍しくはありません(私の祖父の系図がまさにそうでした)。
家族法の歴史についてまで全てを今ここで語るのは文章量的に難しいので、とりあえず「1つの役所で全てを取れるとは限らない」と覚えておけば足りるでしょう。
まとめ
- 戸籍の請求先は本籍地が書いてある役所に聞いてみる。
- 請求方法は窓口に直接行くか、行けなくても郵送という方法がある。
- 転籍などを原因として1つの役所で全て戸籍を取れない場合がある。