家系図を自分で作ってみよう~作成編②~

家系図家系図

家系図作成講座もいよいよ大詰めとなります。
これまでの解説をキッチリ実践できたのならズバリ後は書くだけです。

第4回目のテーマは「綺麗な家系図の作り方」になります。
そもそも、家系図は「絶対にこう書かないといけない」というルールはありません。
まずはそこを押さえつつ、「一応こう書く」みたいなものもあることを認識して参考にしてみてはいかがでしょうか。

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ルールを決めたら徹底する

綺麗な家系図を作る最大のコツは「ルールを決めて守る」という事だと思います。
例えば地図の記号なども一定のルールを守るからわかりやすいものになるのです。
神社を「⛩」で書いてみたり「卍」で書いてみたりしたらわけがわからなくなってしまいますよね。
わかりやすいという事は整然として美しいという事でもあります。
ちなみに国土地理院によると「⛩=神社」、「卍=寺院」とされています。
家系図にはそこまで徹底された統一ルールはありませんが、「一応こう書く」というものを参考にしつつ、まずはご自身で記号のルールをしっかり決めることが良いと思います。
そして決めたルールを徹底する、そうすることで見やすい家系図が作れるでしょう。

家系図の種類とは?

実は家系図には用途によっていくつか書き方に種類があります。
せっかくなので見ていきましょう。
家系図の書き方は大別すると縦に伸びるタイプ横に伸びるタイプがあります。

縦に伸びるタイプの家系図

各種の資格試験であるとか大学の一般教養であるとか、民法という法律の中の「相続編」という分野でよく使われるのが「縦に伸びるタイプ」の家系図です。
ですので私自身も資格試験のときに勉強したのはこのタイプの家系図でした。
現代社会で最も一般的な家系図はこのタイプではないかと思います。
メリットとして視覚的に直感的にわかりやすいので先日の記事でもこのタイプを採用しています。
例えば、「いらすとや」で「家系図」と検索するとこのタイプが出てきます。

いらすとや「家系図のイラスト」より引用

近年で最もスタンダードな家系図のタイプだと言え、どう書くか迷っている方にはオススメです。
世代間の関係が直感的にわかりやすいので、まずはこの書き方にチャレンジしてみてはいかがでしょう。
ここでのポイントは「横(=世代)をきっちり揃える」ことに尽きます。

横に伸びるタイプの家系図

「縦に伸びるタイプ」は縦に家系図は遡っていく形になりますが、兄弟姉妹の横の列をきっちり揃えると世代の関係がわかりやすいです。
横の列をきっちり揃えないとわかりにくくなってしまいます。

ルールを決めたら徹底する
横に伸びるタイプの家系図

一方で「横に伸びるタイプ」の家系図もあります。
例えばこのような家系図になります。

横に伸びるタイプの家系図
2つのタイプはどっちが良いの?

一枚絵のような形にしたいのであれば「縦に伸びるタイプ」、巻物のような形にしたいのであれば「横に伸びるタイプ」が適していると思います。
どちらが優れているかは好みだと思います。一枚絵タイプにしたいのか、巻物タイプにしたいのかどちらか好きな方で良いかと思います。
ただ、個人的な意見を参考までに言わせていただくと、紙を丸めて手入れをせず10年単位で保管したらどうなるか。
小学校の卒業証書を丸めて押し入れに入れっぱなしにして、後日どうなったか想像するとわかりやすいと思います。
家系図とは作ったらそこで終わりではなく、10年・20年、下手をすれば100年単位で文献として残るものですので、なるべく紙が劣化しない保存方法がよろしいかと思います。
巻物タイプ(横に伸びるタイプ)がダメとまでは思いませんが、特に決まっていないのであれば一枚絵タイプ(縦に伸びるタイプ)を選択すると良いかと思います。

相続関係説明図とは?

家系図のタイプについて触れたのでついでに見てみましょう。
相続関係説明図についても一般に「家系図」と呼ばれる書類でもありますが、前述した2タイプの「家系図」とは全くもって似て非なる書類になります。
前述の2タイプの家系図は「血筋を明らかにする」ことが目的ですよね、ご先祖様を知りたいのです。
ですから、本人→両親(父母)→祖父母→曾祖父母→高祖父母→・・・というように、たくさんのご先祖様を「わかるだけ書く」という事が一般的です。なお、詳しい解説は別の機会に譲りますが「鑑賞用、記念用の家系図だ」という最高裁判所の判例があるのもこちらです。
一方で、相続関係説明図は読んで字のごとく「相続に関係する人をわかりやすく説明するため」に作られます。こちらは事実証明と呼ばれて目的が違うのです。
各種の相続手続でこれを提出すると、要するに担当者が手続をスムーズに行うことができます。
具体的には例えば、このような書類になります。

相続関係説明図の記載例
相続関係説明図の作成には資格が必要

相続関係説明図は「事実証明」として行政書士(弁護士)の専門領域になります(行政書士法第1条の2第1項)。
この点、詳しい解説は別の機会に譲りたいと思います。
簡単に概略だけ書いていくと、まず根拠条文はこちらです。

行政書士法
(業務)

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
業務の制限)
第十九条
 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。
第九章 罰則
第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
 第十九条第一項の規定に違反した者

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000004


相続関係説明図は基本的には前述の士業しか作成することができず、無資格者が作成してしまうと行政書士法違反となってしまう可能性があるのでご注意ください。
なお、例えば「不動産登記申請」などに使用するのであれば司法書士というように、他の法律関連士業が可能な場合もあります。
いずれにしてもこの書類については国家資格が必要で、この書面を無資格で作成することは行政書士法をはじめ各種士業関係で法律違反となる可能性が高いと思います。
理由は簡単、相続人の判定を正確に行うことが必要で法律の知識が不可欠だからです。
代襲相続と相続放棄の関係、縁組前後の関係、同時存在の原則への理解などなど、相続人の判定は相続手続の初歩中の初歩ではありますが押さえるべき家族法への理解がそれなりに必要です。
よって、相続関係説明図の作成については各法律系士業の有資格者しか行うことができないという取り扱いは妥当なところかなと思います。

家系図で使う記号について

再三になりますが、家系図は「こうでなければならない」というルールは特にありません。
ご自身が納得できればどんな記号を使ったとしてもそれで良いと思います。
あくまで参考までに一般的に用いられる書き方をご紹介します。

生年月日などの情報について

家系図には氏名だけ載せる、それはそれでシンプルでわかりやすいと思います。
ただ、「年月日●●」という形で他に情報を付記する場合も多々あります。
例えば「生年月日」や「没年月日」など併記することが一般的であるように思います。
理由としては様々あるでしょうが、この情報を載せてあげることで「いつ亡くなったのか」などすぐにわかります。「○回目の祥月命日」だとすぐにわかるのもメリットでしょう。
私自身は特に信教のない一般的な現代人と言えますが、ご先祖様への感謝はできるだけ行いたいと考えています。各種の宗教観など全く詳しくはありませんが、一番の供養は時々思い出して手を合わせることだと思うのです。大切な人の命日くらいは故人を偲ぶというのも供養の一つではないかと思います。
記載例を挙げておくと例えばこのような感じです。

家系図に情報を併記する

ただ、ずっと言っている話ですが「家系図の作り方」にルールはありません。ご自身が見やすい方が良いと思うのなら極力情報は記載しない方が良いと思いますし、情報量の詰まった家系図が良いと思うのなら色々記載すれば良いかと思います。
戸籍には生年月日・没年月日のほか、婚姻年月日・離婚年月日・縁組年月日・転籍年月日など案外入手できる情報は多いです。
個人的には「生年月日・没年月日」だけで十分かなと思います。婚姻年月日など他の情報は「家系譜」の方に家系図とは別にまとめるのが良いと思います。
情報はあるだけ記載すれば優れているというものでもなく、一般論として無駄に情報が多いとUI(ユーザーインターフェース)の側面でマイナスとなってしまいます。

家系譜とは何か?

家系譜とは戸籍などの情報を年表形式にして個人別にまとめたものになります。法律用語などではありませんが「家系譜」と呼びます。
例えばこのような記載例になります。

家系譜の記載例

前述の通り、全ての情報を家系図に掲載することもできなくはありませんが、それでは情報が氾濫して逆に雑多になって見にくい。そこで主要な出来事と年月日などを家系図とは別にまとめるのです。ちょっとした冊子の形にすることが一般的であるように思います。
戸籍の情報だけでもそれなりに色々な情報が入手できますが、それ以外にも「令和1年の宝くじにあたった!」「令和2年に念願の自宅を購入した!」「令和3年に部長に昇進してお祝いした!」「令和4年に長男が難関大学に受かった!」「令和5年に犬を飼い始めた!」みたいなエピソードがあれば加えると後々楽しく懐かしく読めるのではないかと思います。
そうなってくると「自分史」であるとか「一族史」にどんどん近付いてくるような感じはします。
この辺りの用語の境界線はあってないようなものです。
一般的には戸籍の情報を中心に「家系譜」へ記載していくことになるかとは思いますが、特段「こうでなければならない」というものはなくて、その点で「家系図」と同じですね。

婚姻を示す記号あれこれ

「結婚した」であるとか「離婚した」であるとかは「年月日婚姻」とか「年月日離婚」とか仮に書くのであれば「年月日生」のところに書けば良いと思います。見やすくてシンプルな家系図を目指したいのなら書かない方が良いでしょう。
しかし「結婚した」という情報は「記号」として記します。名前と名前を「=」で繋いでいたら結婚しているのだという話です。
各種資格試験用の民法の法律テキストなどにも「=」が採用されていることが多く、この「=」で繋ぐ方法が一般的であると言えるでしょう。

それでは「離婚した」という記号はどうするのか。
法律テキストなどでは「=」に×をつけることや「―」で繋ぐ場合が多いです。
しかし、こと「家系図」の話については判断がわかれることでしょう。特に「×」は印象があまりよくありません。また、離婚をすればその家系とご縁がなくなったということで、何か特別な事情がないのであれば家系図にわざわざ離婚歴など載せる必要はないかと思います。
逆に死別なのであればご縁はなくなっていないので記載する方が良いと言えるでしょう。
ただし、離婚前にお子さんがいるのであれば両親がすぐにわかった方が良いという理由で、載せるべきでしょう。この場合に「×」よりも「ー」の方が印象が多いので「ー」を採用すると良いと思います。

記載例としては例えばこのような形になります。

婚姻を示す記号あれこれ

上記の図の一番下の段など「お子さんがいる」というケースです。前妻・後妻・前々妻など工夫をすればわかりやすい書き方をすることができます。
色々な書き方があるでしょうが、個人的には子供を中心に考えて右から順に並ぶように配置すると良いと思います。

養子を示す記号あれこれ

古い戸籍を見ているとびっくりするほど「養子縁組」を散見します。
要するに他から子供を引き取って実子として育てるという現代の民法にも残る制度です。
現代の感覚からすると非人道だ!と憤りを感じる方がひょっとするといらっしゃるかもしれませんが、江戸時代以前から続く戦前では案外珍しいものではなかったのです。また、三男など家を継ぐことができない子が、別の家とは言え家長にまでなれるのです。家長候補として大事に育てられる場合も多かったようで、養子になる子供としてもそう悪い話ではなかったのではないかと思います。
必ずしも養子だったから可哀そうな過去があったのかというと、そういうわけではない点への頭の切り替えは必要です。
日本人の国民性調査」での「養子に家を継がせる」というアンケート回答は昭和28年(1953)において74%でしたが、平成25年(2013)においては実に20%まで低下しています。これは日本人の「家」に対する考え方が大きくシフトしている事を端的に物語っていると言えるでしょう。養子縁組という制度への考え方やイメージは現代と戦前の日本では全く異なります。

古い文献を見ていると特に江戸時代は「家柄」というものを自分の命よりも重視していた風潮があるように思います。俗にいう「お家を守るんだ」という考え方です。
そして、「お家が途絶える」ということを先祖に申し訳が立たない、と本当に避けるべきことと考えていたのです。お家を栄えさせることが家長に与えられた使命だったとも言えます。
ところが「男の子」が産まれないまま放置すると「お家が途絶える」と考えたのです。自分の娘に婿入りさせるとか様々な形態があったようですが、その一つとして「養子縁組」が盛んに活用されていました。

養子縁組を表す記号としては「||」のように縦の二重線で繋ぐという表記が一般的であるように思います。点線で繋ぐという手法もあるようですが、見にくいので個人的には前者の方が好きです(この辺り完全に好みではないかと思います。)。
また、縁組がなされると従前の戸籍から抜けて、新しい「養親」の戸籍に入ることになります。
正確なところは現行法の特別養子縁組などの理解まで必要ですが、ここではさしあたり「養親」と「実親」の違いを押さえておけば問題ないかと思います。

養親と実親

実親とは実際に子供を産んだ夫妻の方を指します。こちらの一族の事を広く括って「実方」と表現する場合もあります。
養親とは引き取ったサイドの親を指します。民法上の用語ではありませんが俗に「里親」とも呼ばれます(厚生省の解説)。こちらの一族の事を広く括って「養方」と表現する場合もあります。

それでは具体的に記載例を見てみましょう。

養子を示す記号あれこれ

ここで「実親を家系図に載せるべきか?」という問題はあるかと思います。
上記の例で言うと山田A郎の養親はB郎・B子夫妻で、実親は太郎・海子夫妻になります。何か特別な事情があるのなら伏せる方が望ましいかもしれませんが、配慮すべき特別な事情がないのであれば太郎・海子夫妻もご先祖様であることに変わりはないし、実子として育てたB郎・B子夫妻も親であると言えるし双方載せて私は構わないと思います。
どちらも尊重すべき存在であると私は思います。

まとめ

  • 家系図は最初に記号などのルールを決めると良い。
  • 一度ルールを決めたら徹底すると美しく書ける。
  • 家系図のタイプは「縦に伸びるタイプ」がおすすめ。

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この記事を書いた人

【経歴等】
1981年、宮崎県生まれ。ジェネラジカルの代表。/大学院卒業後に英国系企業、特許事務所、司法書士法人などの勤務経験を経て東京都にて独立。/現在は家族法務・企業法務・セミナー講演・コラム執筆などを中心に活動を行う。/東京都行政書士会などに所属。

【保有資格】
行政書士
海事代理士
認定経営革新等支援機関

ほか、詳細は代表プロフィールをご参照下さい。

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