具体的に遺留分とはどのくらいの取り分になるのか?を見ていきます。
第3回目のテーマは「事例に即して考えてみる」です。
総体的遺留分と個別的遺留分
前回の記事で、遺留分は原則として1/2だと考えるとわかりやすい、というような説明をしたかと思います。
この1/2という割合は「総体的遺留分」と呼ばれるものです。
個人個人の遺留分を見る場合には法定相続分をかけて割合を出す必要があり、これを「個別的遺留分」と呼ぶ場合もあります。
一応紹介はしましたが言葉の定義はさして重要ではなく、大事なのは誰かの遺留分を知りたい場合には「法定相続分×遺留分割合」という計算をする必要があるという事です。
具体的な事例で考えてみる
最近、よくご登場頂いている山田B郎さんの話でいきましょうか。

山田B郎さんがこれから遺言を書くとして、誰がどの程度遺留分を持つのか考えてみましょう。
せっかくですから答えを見る前に、軽く考えてみてくださいね。
考え方の方針
遺留分を計算するためには、法定相続分が必要です。
そして、法定相続分を出すためには法定相続人が誰なのかを考える必要があります。
したがって、まずは法定相続人が誰なのかを考えましょう。
法定相続人は誰なのか?
このケース、山田B郎に配偶者がおりますので、まずは妻のB子が相続人です。
そして、「第一順位」として子供がおりますので、C郎・C子・C次の3人も相続人です。

ちなみにA郎・A子は「第二順位」の人ですが、今回は第一順位がいるので相続人とはなりません。
B郎の姉・兄に至っては兄弟姉妹ですから、そもそも遺留分が生じる可能性がゼロです。
法定相続分はいくつか?
今回、「配偶者+第一順位」というパターンですから「1:1」でしたよね。
そして、第一順位が3人いるので、1/2を3人でわけるという話でした。

従って法定相続分は次の通りになります。
B子 1/2
B郎・C子・C次 各1/6
個別的遺留分はいくつか?
法定相続分が出たのなら、あとは総体的遺留分である前回解説した「1/2」をかけてあげるだけの話になります。
B子 1/2 × 1/2 = 1/4
B郎・C子・C次 1/6 × 1/2 = 各1/12
上記が設問の答えとなります。
遺留分のこの解説をするために随分遠回りをしましたね。
ですが、遠回りをしてしまう理由がなんとなく伝わって頂ければ幸いです。
純粋にややこしいのです、この分野の話は。
おそらく法律系国家資格の受験生であっても苦手意識のある方は多い分野だと思います。
下手をすれば「出ないことに懸けて勉強時間ゼロ」でそのまま合格してしまう人さえいるかもしれません。
さしあたり「遺言を書く」というシーンではここまでの計算でざっくり出してそれで良いと思います。
そもそも、遺留分侵害額請求を行使し合うという状況を避けることが最優先ですので、そちらの対策の方がより重要であるように思います。
今回の話から一歩踏み込んで遺留分侵害額の具体的な計算となると更に難しい論点が山のようにあります。
これから遺言を書くという人には踏み込む必要のない知識と思いましたので、長らく続いたシリーズはこれにて一旦終了にしたいと思います。
今すぐ知りたいという方は「遺留分侵害額 計算」などで検索すると弁護士の先生などが解説してくれていますので、そちらを参照してみると良いかもしれません。