相続登記の料金が無料って知ってます?④

相続手続

第4回目のテーマは「自分で相続登記にチャレンジする」というものになります。
令和6年から相続登記が義務化されるので、10万円の過料を回避するためには何らかの手立てが必要です。
プロに依頼をすればそれなりに高額ですし、かと言って放置もできない。
そんなときに選択肢の1つとして「自分でやる」があっても良いと思うのです。
そもそもの話として民事訴訟や刑事訴訟を含めて国等への手続は全て頑張れば自分で可能です。
ただ、「自分でやる」場合にはメリットだけではなくデメリットがあるという点もしっかり認識したうえで判断してくださいね。
それでは前回の話をもとに、法定相続分による相続登記について見ていきましょう。

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一般的な法定相続分による相続登記の流れ

以下、法定相続分による相続登記について一般論をご紹介します。
あくまでも相続登記手続のイメージ作りとしてご参考まで。

①相続した不動産は何個?
普段生活していると「土地」というと庭を含めて全部で1個と思ってしまいそうですが、案外複数あるものです。念のため、相続の対象となっている土地や建物が他に存在しないか確認をした方が無難です。
ちなみに正確に言うと土地の数え方は1筆と数えます。
具体的な手続としては市区町村役場の「課税課」という窓口にて手続が可能です。
役所で取り扱いに相違はありますが、一般論として「相続手続をしたいから『名寄せ』を行いたい」と言えば対応してくれるでしょう。名寄せの手続についてはこちらに詳しい解説がありましたので参考まで(立川市HP)。ちなみにここで戸籍等の書類が必要になりますが、②の手続と合わせてやると良いかもしれませんね。
②戸籍・住民票等の取得
普段戸籍に慣れていないでしょうから踏ん張りどころかもしれません。
法定相続分による相続登記で必要なものは、
【亡くなった人(被相続人)】
 ❶出生~死亡までの戸籍謄本+全部事項(除籍のこともある)
 ❷住民票の除票の写しor戸籍の附票(必要になる場合があるので取っておく)
【相続する人(相続人)】
 ❸一番新しい戸籍
 ❹住民票
状況により変化しますが、とりあえず上記が基本形になります。詳細は申請書記載例のところに詳しく書いてあります。わからなければ法務局に電話すれば教えてくれます。また、市区町村の役所の発行窓口でも「相続手続に必要な戸籍が欲しい」と聞けば教えてくれると思います。最近の役所はその辺り非常に親切です。
③登記事項証明書を取得する
不動産の表示という欄について「所在・地番(・家屋番号)」などの情報がないと申請書を埋めることができません。その正確な情報を取るのにそれぞれの不動産についての登記事項証明書という書類が必要になります。
相続登記の申請先は「不動産がある場所」ですが、この登記事項証明書についての取得先は日本全国どこの法務局でも可能なので楽ちんです。
最初の①で取得した名寄帳(or納税通知書)を持って法務局に行けば教えてもらえると思います。
④申請書を書く
先ほど紹介した申請書テンプレートをダウンロードして書いていくだけになります。
注意点としては今回の記事のテーマである「税金タダ」にしたいなら、「タダにしてよ」って根拠を書かないといけないところです。
法務局のホームページに詳しく書かれているので熟読しましょう。記載例などもあります。仮にわからなければ直接電話して聞いてみましょう。
先ほどから述べている「100万円以下」の免税の話であれば同HPでは、
「登録免許税 租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税
とされています。
ただ、必ず法務局の事前相談時に確認すべきだと思います。根拠条文が違っていたら特例措置が受けれないという取り扱いになるので。
そもそも使用している申請書のテンプレートが間違ってる可能性もあります。
⑤法務局の相談予約(無料)をする
直接そのまま申請をしても良いのですが、不動産という高額な財産の手続です。民法と不動産登記法によほど精通している方でない限り、必ず法務局による事前相談をした方が良いと思います。
基本的には予約してから相談をするという流れです。当日予約は多分難しいので、事前予約と考えた方が良いです。
 ➡Googleなどで検索しても出ると思いますが、それがわからない方は法務局HPをご覧ください(各法務局のホームページ)。
⑥法務局にて相談をする
準備した書類記載した申請書ハンコ(なんでも良いです。印鑑証明書の登録は法定相分の相続登記には必要ありません。)、登録免許税として必要な収入印紙代金を持っていく。
なお、「登記申請をした後」の話も教えてもらっておきましょう、ここでは割愛します。
⑦収入印紙は相談した後に買う
印紙を先に買ったら登記できないとかって話じゃないんですけど案外大事です。
金額が少な過ぎたり多過ぎたりめんどくさい事になります(特に多過ぎた場合)。
法務局には同じ館内に収入印紙売り場が併設されている場合が多く、事前相談で確定してから収入印紙は購入した方が良いと思います。
相談員の方に事前相談でOKと言われてから収入印紙は買いましょう。
⑧申請書を窓口に出す
購入した収入印紙を申請書に貼ったら準備完了です。
作った申請書、集めた書類をまとめて法務局の窓口に提出します。
これで一応は終了ですが、何か不備があれば法務局から電話がかかってくるので対応しなければなりません。
完全に相続登記手続が完了するのは1~2週間後になるかと思います。

以上で大筋の流れは終わりです。

なお、本記事に関する個別具体的なご質問は一切お受けすることはできません。
あくまでも本記事は法改正の啓蒙目的で登記制度を一般的抽象的にご紹介しているだけです。

また令和5年3月時点での最新情報を元に本記事を作成しており、執筆の際にも過誤がないよう細心の注意を払っております。しかし、万が一過誤があった場合に、本記事による損害賠償等の責任は負いかねますのでご了承ください。記事をご覧になっている時点で最新かつ正確な情報が欲しいのであれば、最寄りの司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。市区町村の役所や法務局も直接電話をすれば親切に回答してくれると思います。
また、ご自身で行うのであれば、登記申請の前に必ず法務局による事前相談(無料)を行うよう強く勧めさせていただきます。申請書の具体的な書き方であるとか、法務省HPにあったマニュアルの意味などわからない事を手取足取り教えてもらえると思います。

それでは相続登記の義務懈怠への過料10万円を回避する方法は、「相続登記を行う」以外に存在しないのか?
この点について補足ではありますがどんな手段があるのか見てみましょう。

相続登記申告制度を活用する

相続登記義務化と同日の令和6年4月1日に新制度がスタートします。
前述のとおり、相続登記の義務違反のペナルティは10万円の過料となりますが、この申告を法務局に行えば義務を免れるという仕組みになっています。
詳細は法務省HPにて。

これは正確には相続登記ではないので改めて相続登記を申請する必要はあります。
ただ、相続登記を行うとなると法定相続分による相続ならまだしも、遺産分割など考えると時間がかかるので相続登記をすぐやれと言われてもそれなりに大変です。
この制度の具体的な運用がどうなっていくかはこれから定まるものと思いますが、さしあたりペナルティの10万円過料の回避には使えるものと思われれます。
また、添付する書類であるとか申請書であるとか相続登記よりも簡易な手続になると思われますので、こちらも選択肢の1つとして「そういう制度がある」と知っておくだけでもメリットがあるかもしれません。
なお執筆時の令和5年3月の時点では具体的な運用は明確には定まっていないように思われます。
これから先例通達等にて具体的な周知がされていくと思われるので、また新しい情報が出たら記事にしたいと思います。

相続放棄制度を活用する

「土地を相続したみたいだけど、使わないから絶対にいらないや。他の財産も特にないし・・・」という場合に相続放棄という手段も存在します。3ヶ月以内に所定の手続が必要という時期的な制限があるため万能とは言えませんが、一応そういう方法もあるという点を選択肢として知っておいて損はないかと思います。
相続放棄を仮に行っていれば、相続登記義務懈怠の10万円の過料にはなりません。
具体的な手続方法については蛇足になるので避けますが、詳細については裁判所ホームページを参考にするとご自身でも手続は可能であると思います。こちらも所定の書類(申述書)に記載を行って、所定の添付書類をつけて収入印紙800円を付けて出すだけで手続的には極めて簡単です。
ただし、手続面よりも実体面の判断(メリット・デメリット)をきっちり理解して行う必要がある点には留意が必要です。この相続放棄を行ってしまうと、後なって「やっぱやーめた」は認められておりませんので注意が必要です。
この点について一応触れておくと、民法第919条第2項以下に「放棄はやーめた」の話が書いてありますが極めて特殊な事情です。
要するに普通は「いったん行った相続放棄を気が変わったからやめる」ことはできません

民法
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条
 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
 前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
 前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
 第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

まとめ

  • 令和6年20244月1日から相続登記が義務になる。
  • 義務懈怠は10万円の過料になるので要注意。
  • 令和7年(2025)3月31日まで登録免許税の非課税の特例がある。
  • プロに依頼する以外に10万円の過料を回避する手段としては3つある。
    ①自分で相続登記を行う。
    ②相続登記申告制度(令和6年施行予定)を活用する。
    ③そもそも相続放棄を行って権利を持たない。

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