先日、所属するボランティア団体にて、豊島区認知症「介護者の会」サポーター連絡会という定例会がありました。
そちらに出席させて頂いたのですが、せっかくの機会ですので「おひとりさま」について少し話をさせて頂きました。
特有の問題が多々ありますが、結論から言うと「遺言書」や「エンディングノート」を準備すると一気に問題が改善します。
専門家に依頼すればきちんとしたものができる一方で費用がかかります。ですが、書店には沢山良い出来の書籍がありますから、頑張って勉強すればご自身のみで作成することも可能だと私は思っています。
是非とも「遺言書」や「エンディングノート」に興味をもって、作って欲しいと思います。
定例会用に作成したレジュメはこちらになりますのでご興味ある方はご一読ください。
「おひとりさま」とは?
「おひとりさま」という用語を時々TVや書籍などで耳にします。
法律用語ではないので、あくまでも俗語ということになりますが、簡単にいうと「おひとりさま」とは、配偶者や子供がいない方を言います。
結論を言うと、多くの場合に「兄弟姉妹が法定相続人となってしまう」というのが問題の所在です。
被相続人より先にその兄弟姉妹が亡くなってしまえば、代襲相続が生じてしまい、甥や姪といった続柄の方が代襲相続人となります。
甥や姪、叔父や叔母、従兄弟といった方々の連絡先全てを知っている人はどの程度いるのでしょうか。
遺産分割協議には法定相続人全員の関与が必要ですから、これが中々に難航します。
また、普段連絡を取っていない方々での遺産分割協議ですから、これも紛糾してしまう可能性がありますよね。
そのほか、「財産がなにか」という問題もあります。
兄弟姉妹ですら預金口座が何か?だとか、所有する不動産がどこにあるか?だとか、お互いに完全に把握している方は珍しいのではないかと思います。
「うちには財産なんてない(少ないの意)ので関係ないよ!」という話を本当によく耳にしますが、服も靴も下着も所有物が一切ない状態であれば関係ないかもしれません。
所有物が一切ない状態で負債がゼロの状態で亡くなれば相続財産はピッタリゼロという場合があるかもしれませんね。
しかし、多くの方が預貯金の多寡に関係なく何かしら物(動産)を所有しているはずです。
普通は自分の財産は自分しかわからないわけで、これの調査というのはこれまた中々難しいです。
誰かが亡くなってしまうと、葬儀や遺品整理、医療費等の清算など多額のお金が必要になります。
その出費を少しでも補填したいと考えると、この「財産がわからない」というのも困った問題です。
【用語解説】代襲相続
代襲相続とは、被相続人より以前に相続人が亡くなった場合に、その子が「代わりに相続人になる」という仕組みです。
なお、亡くなる順番が変わると法定相続人の考え方はがらりと変わってしまうため注意が必要です。
民法(e-gov)
(代襲相続人の相続分)
第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
「おふたりさま」とは?
先の「おひとりさま」と同じくこちらも俗語になりますが、「おふたりさま」とは、配偶者はいるが子がいない方のことを指します。
配偶者のどちらかが亡くなってしまうと、「おひとりさま」の状態になってしまいます。
つまり、潜在的に同じ問題を抱えていることになります。
【用語解説】「おひとりさま」と「おふたりさま」
「おひとりさま」とは、配偶者も子もいない方のこと。
「おふたりさま」とは、配偶者はいるが子がいない方のこと。
対策とは?
専門家の立場としては遺言書を作成することを強くお勧めします。
エンディングノートだけでは好転するとまでは言えないですが、何もしないよりは随分マシであると言えるでしょう。
特に、遺言書とエンディングノートはセットだと私は考えております。
その心はどちらも「大切な人へのラブレター」だからです。
単身高齢世帯が今後爆増することは各種の統計データより明らかであり、今後この「おひとりさま」問題が急増するのではないかと非常に懸念しています。