私の相続人はだれ?⑨

相続手続

遺言を書くにあたって遺留分という制度を知っておいた方がよく、遺留分を計算するためには相続制度を知る必要があります。
第9回目は「亡くなる順番が違ったら?」というテーマで見ていきます。

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亡くなる順番で何か違うの?

相続というものは時系列が変わると全く話が変わってきます。
言葉だけではイメージしにくいので具体的に見ましょうか。
題材は前回の事例でいきましょう。

亡くなる順番は「B郎→A郎」でしたよね。

ケース1:B郎→A郎という順番で亡くなったケース

図示するとこのようになります。

ケース1:B郎→A郎の順番で亡くなったケース

2つの相続事件ですので分けて考えます。

①B郎の相続人
 →B子(B郎の配偶者)、C郎(B郎の子で第一順位)
②A郎の相続人
 →A子(A郎の配偶者)、C郎(A郎の子B郎について代襲相続して第一順位)

という結論になります。
では亡くなる順番が変わったらどうなるでしょう。

ケース2:A郎→B郎という順番で亡くなったケース

図示するとこのようになります。

ケース2:A郎→B郎の順番で亡くなったケース

こちらも同様に2つの相続事件ですので分けて考えます。

①A郎の相続人
 →A子(A郎の配偶者)、B郎(A郎の子で第一順位)
②B郎の相続人
 →B子(B郎の配偶者)、C郎(B郎の子で第一順位)

という結論になります。
えっ、一緒じゃないかって?
いえいえ、ケース1とケース2は似て非なるものです。
読み進める前に「何が違うのか?」をしばし考えてみてください。

2つのケースで何が違うのか?

確かに一見すると何だか似たような感じです。
決定的な違いは「A郎の遺産の行方」というところになります。

まず、ケース1から見てみましょう。

(再掲)ケース1:B郎→A郎の順番で亡くなったケース

こちらは②A郎ご逝去でA子とC郎が相続人でした。
となれば、A郎の遺産は基本的にはA子とC郎にしかいきません。
逆に言えば、B子には対策を行わなければ1円も行くことはありません。
仮にA郎がB子にも渡したいと考えるのであれば遺贈や生前贈与などの対策が必要です。

次に、ケース2を見てみましょう。

(再掲)ケース2:A郎→B郎の順番で亡くなったケース

こちらは①A郎ご逝去でA子とB郎が相続人でした。
ですので、A郎の遺産はB郎にいったん入ると考えなければなりません。
そして②B郎ご逝去でB子とC郎が相続人でしたよね。
従って、A郎の遺産はB郎を経由してB子にも入る事になります。

どうでしょう。
時系列が変わると全く話が違ってくる、の意味が多少は伝わりましたでしょうか。

ただ、「遺言を書く」という事だけを考えるのであれば「おそらくこの人が相続人だろうな」という認識で書いてもそこまで大きな問題になることはないです。
例えば事業承継であるとか、何か厳密に考えなければならない事情があるのであればご自身でやるのはなかなか難しいかもしれません。
例えば、非上場株式や持分会社の持分権などで経営権が関与するなどすれば特別決議(会社法309-2)に配慮すべき話になりますので、厳密に考えた方が良いでしょう。特に持分会社の場合は定款を調整する必要があります。社員の死亡は法定退社事由(会社法607-1-3)となり下手をすれば法定解散事由(会社法641-4)です。そのまま何もしなければ持分会社が消滅しかねない話に繋がります。
会社法や商業登記法の専門書を読むなどして頑張れば勿論ご自身でも可能です。ですが、ここで解説している民法だけの知識で対処できませんから、信頼できる専門家に依頼するという方が無難だとは言えます。

さて、ようやく「相続人が誰か?」というテーマは一通り終了です。
でも「遺留分」を考えるにはまだワンクッション必要になります。
残るテーマは「相続人の取り分は?」になります。

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