全部あげるって遺言はまずい?②

遺言

遺言と相続は切っても切れない関係にあります。
前回の続きで「民法はそんなにも酷いルールなのか?」が第2回目のテーマです。
結論から言えば、妻花子を救う手立てはあります。本日ご紹介する話以外にも扶養請求であるとか生活保護の申請であるとか手段はありますが、本筋から離れてしまうのであくまでも今回は「相続制度」の中で救う手立てを考えるという点、ご了承ください。

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民法はそんなにも酷いルールなのか?

遺言という制度は遺言者の最終意思の実現というところに制度趣旨があります。
自分の財産なのだから、自分が亡くなった後にどう使おうがそれも自由というわけなのです。
これを被相続人による財産処分の自由、というような表現をします。

しかし、一方で先の例によると妻花子は困ってしまいますよね。
長男一郎から「私に所有権があるから出て行ってね」と言われて出て行かざるを得ません。
多くはない年金を握りしめて住む家もなく、これからどうやって暮らしていけと言うのでしょう。
そこで、民法は相続人の生活の安定のため次のようなルールを設けました。

民法
第九章 遺留分
(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

これを遺留分(いりゅうぶん)と言います。
そもそも民法上の遺留分制度だけでも難解と言え、各種の法律系国家資格試験ですら概略しか出題されない事が多いです。
おまけに中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律という遺留分に関する特例法があるなどして、一度に全てを勉強するのは難しいかもしれません。

そこで、順を追って話をしていきますのでまずはアウトラインだけ押さえましょう。
詳しい概略は後に譲りますが、要するに「一定の相続人には生活保障のためにある程度の金額は渡すべき」というルールがあるという点が理解できれば十分です。

次回はこの「一郎vs花子戦争」の事例に沿って見ていきましょう。
この遺留分制度を活用すれば花子を救うことができます。

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